TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

健康志向って悪いこと?

 塩野七海さんと新見正則さんが文藝春秋令和2年新年号で対談していたのを読んだ。テーマは「健康志向を切る」のようなものだ。タイトルは、<日本人よ「健康神話」を捨てよ>というものだ。塩野さんの「ローマ人の物語」の文庫本を通勤途上で読み継いだことがある。また歯に絹着せぬエッセイを時折り書いているので好きな作家の一人だ。新見さんは東大出身で帝京大学病院の内科医師だ。免疫学が専門の臨床医だ。この方もテレビの医学・医療番組における軽妙かつ洒脱なコメントが印象に残る。マウスに音楽を聴かせて免疫力を高める研究で2013年に「イグノーベル賞」を受賞した。イグノーベル賞というのは、「まず人々を笑わせそれから考えさせる研究に贈られる賞だという。この二人の対談なので読まなくても結論というか切り口の予測がついた。「健康志向もほどほどに、人には寿命があるのだから適当にオサラバしましょうよ」というものだろう。以下は読んでからの感想を書く。

 読んでみると予想通りであった。興味深くて感銘した発言を引用する。

 塩野 先生は、「そもそも、身体に悪いことは何でも楽しくて、楽しいことはストレス解消になります」なんて、愉快なことを言ってくださる。
 新見 本当にそう思います。
 塩野 私の時代の「家のしつけ」というのは、東京言葉で言うと、「みっともない真似はしない」というものでした。。そこには、「正しいか、正しくないか」「他人に迷惑をかけるか、かけないか」とかは、一切入ってこない。・・・・。
 新見 ちょっと悪いことでもしますか(笑)。
 塩野 かつての私は、これと思った男はモノにしてきたの。
 新見 良いですねえ!
 塩野 昔はね。そもそも不倫がどうしてわるいんですか。だって、ある程度の年齢になれば、相手となる男には、たいてい奥さんがいますから。・・・・。それに、私が惚れたくらいの男ならば、他の女たちが惚れても当然でしょう。だから、”公共財”ではないかと(笑)。

 上に引いた辺りの件が一番面白かった。ローマの男たちをも描いてきた塩野さんはやはり豪快な方だ。ねちねちした不倫騒動は吹き飛ばす勢いだ。不倫がばれて、「不徳のいたすところで・・」と謝罪会見するのを最近は目にするが疑問に思ってきた。不倫を詫びるのは世間にではなくては、男なら妻や家族にだろう。塩野さんの発言は、宇野千代さんや瀬戸内寂聴さんと同じだね。女性もここまでくると(世間から)突き抜けてしまっている。
 医療についての発言も私の予想度どりの展開だった。

 塩野 私は受けたことはないのですが、健康診断や人間ドックは、やはり受けるべき?
 新見 受けなくていいと思います。今、80歳、90歳の多くは、人間ドックなんて行っていない。病院は調子が悪い時に行けばいいだけでの話です。調子が良い時は、行かない方がいい。余計な検査や治療をされるからです。・・・・。

 この辺りのやりとりは当たり前の発言だ。誰だって、調子が良い時には病院なんていかないよ。わたしの場合は、この30年間に病院に通い続けてきた。行きたくて行ったわけではない。C型肝炎ウイルスがみつかる前も、GOT,GPT、γGTPが高いと言われてしかたなく病院にいったのだ。大腸ポリープが見つかったときも、便に血が混じっていると指摘されたからだ。それというのも、会社の定期健康診断を受けたからの結果だ。いわゆる成人病検診を一切うけないほうがよかったのかどうかは分からない。

 次に引用する件は現在の医療の盲点をついていると思う。高齢者には点滴を止める時期があるのだ。
 塩野 先生の文章では、お母様亡くなられた時のお話も印象的でした。
 新見 私の母は、点滴も医ろうもしませんでした。「食べられなくなったらお迎えだ」という話を以前からしていたんです。ただ、何もたべなくなあっても三カ月生きました。とても、嬉しかったのは、母が細くなって、軽くなって、臭いもなく、最後は菩薩のような顔で旅立ったことです。・・・。
 上の辺りの発言は、この特集対談の真骨頂である。新見さんは、ご自分の母親には最高の医療を実践していたのだ。やはり、食べられなくなったら最後とすることなのだ。昔の坊さんが死期を悟ると断食して亡くなったという伝えは自分の最期が分っていたということなんだろう。 

 実は、今日は連れ合いYさんと横浜総合病院を受診してきた。元気な80代のおばあさんたち三名が、「ピンピンコロリと逝きたいね」と話し合っていた。そのとき思ったことは、「よく喋るねえ、当分大丈夫だよ」だった。近頃の病院外来は待合室交流の場でもある。「あの方、最近、外来に来ないわね、どこか悪いのかしら?」は本当の話である。そんなことを考えながら、本日は待合室で「文藝春秋」の特集「健康のためなら死んでもいい!?」を読んでいた。