TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

私の「医人」たちの肖像―(132)近藤克則さんと「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」 ~2005年9月

(132)近藤克則さんと「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」~2005年9月

 近藤さんにはリハビリテーション医学領域の雑誌「総合リハビリテーション」の編集委員の一人に委嘱して就任して貰った折に、初めてお会いした。当時、近藤さんは千葉大学医学部の講師であった。
 「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」という刺激的なタイトルの本を近藤さんが、その頃、医学書院から出版された。この本は同じく医学書院発行の雑誌「公衆衛生」の連載論文を単行本にまとめたものだ。発行は2005年9月だから今からおよそ15年前になる。
■「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」■
●2005年9月:

 「心と社会は健康でつながっている。近年、そんなエビデンスが蓄積されている。本書では、わが国でも広がる『健康格差』に注目。ゆき過ぎた経済格差社会は『負け組』だけでなく『勝ち組』の健康までも悪化させること、また人間同士の暖かなつながりや信頼、安心感が健康を促進させる事実を、社会疫学の理論と実証データで示した。『心の病』が増加する現代において、健康社会実現のヒントに満ちた一冊である。」
 安直に本の紹介文を引用した。当時私も本書を通読した。そのころから既に、経済的な格差が教育や職業に世代を超えて影響を及ぼしていることが指摘されていた。この格差論議に、健康面から切り込んだのが近藤さんの仕事だ。高齢者三万二千人を対象とした綿密な追跡調査で健康な状態から要介護と人数は、所得階層によって五倍もの開きがあるという事実をデータで示したのだ。経済的に弱者でかつ独身で一人暮らしの男性の平均寿命が著しく低くなる、等々のデータが示された。「他人事じゃないな」と言う人も身近にいた。
新型コロナウイルス感染拡大■
2020年4月22日:
 新型コロナウイルス感染が拡大する中で新聞記者たちも取材に苦労しているようだ。そのことが紙面構成に如実に伺われる。足を使っての直接取材に基づくのではなく電話取材による記事が散見される。例えば、4月22日(水)の朝日新聞朝刊で私が興味深く読んだ二つの記事がある。
 一つは、「コロナ危機と世界」という記事だ。〈欧州の新型コロナ対策では「EUの存在感が後退し、国家が台頭した」としばしば言われている。〉という書き出しで始まる記事は、遠藤乾・北海道大学公共政策大学院長に聞いて、国松憲人、野島淳という二人の「聞き手」がまとめた記事だ。今回の新型コロナウイルス対策において、EUが機能したのか否かを論じていて興味を惹かれた。
 もう一つは生活欄の記事で、田村建二(聞き手)さんが、近藤克則さん(千葉大学教授)に聞いて纏めた記事だ。「外出減―高齢者もネットで交流を」というこの記事には近藤さんの上半身写真が載っている。書き出しこうだ。
 「新型コロナウイルスの拡大をくい止めるため、家で過ごすことが求められています。ただ、とりわけ高齢者では、社会とのかかわりが絶たれることで心身の健康が損なわれることが心配されています。千葉大教授の近藤克則さんに聞きました。」
 近藤さんは次のように述べている。
 「私たちのこれまでの研究で、外出の機会が少なく友人らと会う機会が滅多にない、社会参加をせずに家に閉じこもっているといった高齢者は、転倒やうつなどを招きやすく、介護が必要な状態になりやすいことがわかっています。」
 それではどうしたらいいのか?近藤さんは、「高齢者の方でもネットを人との交流に活用して欲しい」、「屋外や換気のいい場所で、少数の人がふだんより距離をとり、マスクをして対話する程度なら、リスクは高くないでしょう。もちろん前後の手洗いは重要です」と応えている。
 ネットのみならず、絵手紙とかハガキや最近はやりの顔のみえるビデオ電話での交流もいいだろう。ともあれ、高齢者(73歳)の私は、まいにち散歩をしてネットでブログを書いて蟄居生活に耐えている。
新型コロナウイルス感染拡大と健康格差社会
 翻って、今回の新型コロナウイルス感染の拡大の状況をみると、健康格差社会の現実を示していると思える。先日も埼玉で新型コロナウイルス感染が判明した50歳代の男性が、軽症のために自宅療養を余儀なくされた。ところが1週間を待たずして自宅で死亡が確認された。また、路上で行き倒れ状態で発見され死亡した人も、死後に新型ウイルス感染が確認された。まさに、健康格差社会の厳しい現実が露呈している。
 新型コロナウイルス感染拡大防止への対応は、もはや政治の課題である。事、此処まで至ると、私たち高齢者は蟄居して自ら健康維持の方策を探りながら終息の日を待つしかない。私の「医人」たちの肖像のお一人として、近藤克則さんのことを書いた。近藤さんは、私の在職中に、名古屋の日本福大に異動された。その後、日本福祉大学教授を経て数年前から母校千葉大学教授になられていると知った。
(2020.4.23)


私の「医人」たちの肖像―〔132〕近藤克則さんと「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」~2005年9月