TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

オルテガ(スペインの哲学者) の名著『大衆の反逆』の新訳が出た

 佐々木孝さん(南相馬市の在野の研究者)による新訳『大衆の反逆』が岩波文庫から出た。
 『大衆の反逆』(1993年)は、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットの書いたものだという。オルテガの名前を辛うじて知っているだけで、もちろん読んだことがない。20世紀の大衆社会を鋭く洞察した名著なのだという。『大衆の反逆』は、これまで複数の日本語訳が出ているが、本論以外に、それぞれフランス語と英語版の翻訳出版のために書いた「フランス人のためのプロローグ」「イギリス人のためのエピローグ」を収録して日本語に訳されたものは初めてだという。日本で、オルテガの名を広めた一人に、たしか昨年か一昨年に多摩川で亡くなった西部すすむさんがいる。
 佐々木さんは、上智大学スペイン語と哲学を学び、オルテガやウナムーノの研究をしながら、清泉女子大教授を辞めた後、福島県南相馬市に棲んでいた。2011年の東日本大震災では、第一原発から25キロの自宅から認知症の妻を連れて逃げるのを断念して、「モノディアロゴス(独対話)」と題したブログを発信しながら在野で過ごしていた。2006年から『大衆の反逆』の翻訳を始めて、震災による中断を挟んで2018年12月、肺がん治療のために入院する直前に完成した原稿を家族に託した。遺稿は、佐々木さんの著書の愛読者を通じて岩波書店に持ち込まれたのだという。

 興味深い記事を読んだ(2020年6月3日付 朝日新聞・夕刊)。それにしても、佐々木さんはすごい人だ。新聞には、「佐々木さんは、認知症の妻・美術子さんを介護しながら翻訳を続けたと」というキャプション付の写真が載っていた。佐々木さんの翻訳の『大衆の反逆』を読んでみたい。