TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

ジョージ秋山著『ほろ酔いで長生き』(新潮社 2007年)を読んでいる。

 ジョージ秋山さんが今年の5月12日に亡くなったことは既に触れた。ジョージ秋山さんと言えば、私が学生時代に、少年マガジンに「銭ゲバ」や「アシュラ」を連載していた。これらは凄い漫画だったと記憶している。数年前に単行本になった「銭ゲバ」を読んで、こんなに暗い話が少年雑誌に連載されていたなんて不思議だと感じた。とはいえ、「少年マガジン」「少年サンデー」「少年ジャンプ」の読者は、私も含めて大学生が多かったと記憶している。私もこれらの漫画雑誌を読むために喫茶店通ったりしたものだった。
 今回読んだ『ほろ酔いで長生き』には「はぐれ指南」の副題フレーズが付いていた。もしかしたら、なんかの雑誌の連載を単行本にしたものかもしれない。今回、ジョージ秋山さんの経歴を読むと、1971年に一度引退すると言って、漫画を中断して放浪の旅をした後に復帰して、『浮浪雲』を「ビックコミック」に1973年連載し始めた。この連載は以降2017年まで40年余も続いたのだという。
 今度の本『ほろ酔いで長生き』は、実は偶然に稲城図書館の返却棚で見つけて借りてきた。私の読む本は、偶然に図書館で目にして借りてくる本が最近は多い。本のほうから私に微笑みかけてくるのである。あの、「銭ゲバ」の秋山さんの本だから、さぞかし凄いことが書いてあるに違いないと思って読んだ。ところが、凄くもなくて、まともなことが書いてあった。本は第一章から五章まである。各章のタイトルは次のようだ。第一章:すけべな奴は信用できる、第二章:人物かい、第三章:親はあってもこは育つ、第四章:四捨五入で行きましょう、第五章:趣味はいきていることでんす。
 興味深い項目もあります。感想は、秋山さんはハチャメチャのことを言うのかなとおもったら、なんとも心のやすらぐことを書いているのです。たぶん、『アシュラ』よりも『浮浪雲』のタッチで描いているのでした。
 第三章に「どっちもどっち」というタイトルの項目があります。
「四十代の前半でしたか。わたしも人並みに夫婦喧嘩をしました。犬も食わない、意地のつっぱり合いです。しまいには別れ話にまでつっぱり合ってしまいました。その時、わたしが言ったそうです。おたがいに、別れても幸せになるかもしれないし、別れなくても幸せになるかもしれない、どっちもどっちだよ・・・・と。妻は冷蔵庫からビールを持ってきました。二つのコップに注ぎました。二人で照れながらビールを飲んだものです。・・・」
 第三章に、「親はあっても子は育つ」という項目がありあります。実にいいことを言っている。親として子供に対してこのように客観的にとらえていたのに驚く。全文を以下に引用しておきたい。
 「ことわざに、親はなくとも子は育つとありますが、今は親はあってもこわ育つ言った方が、まんざらでもないような気がします。親は子に愛情を与えることはできますが、親の考えや好みまでを与えることはできません。その子にはその子自身の考えや好みがあるわけです。すでに自立しているのです。親が子の逃げ場所になってやることは必要ですが、子供を逃げ場所にしてはいけません。親が子供のようにようになって接するのは良いと思いますが、子供を自分のようにしようとしてはいけません。子供の人格を尊敬してください。子供は親より遥かに遠くを見ているのだと知るべきです。」
 秋山さんは、件の奥さんに先立たれ、最後は一人で暮らしていたらしい。秋山さんは、一見無頼漢のような風貌の漫画家だから、女性にもずいぶん持てたようだ。この本にも、その頃は、「名刺の代わりに(女性に)手を出した」と書いていた。ところが、第三章に、奥さんに触れて次のように書いていた。
<わたし妻はわたしを疑うことがなかったように思います。わたしのポケットを探ったりはしませんでした。自宅の電話番号を書いたおねえちゃんの名刺や、ときには現金まで一緒に洗濯してしまいました。ただの大ざっぱなひとだったのかな?朝帰りなどしても、いつもとかわりなく「お帰りなさい」でした。>
 この文章を読むと、おくさんが大ざっぱなひとだったのではなくて、ジョージ秋山さんが奥さんの手の平で実は踊っていたのではないのかな・・・?

 もう一つ、第五章の、「ほろ酔いで長生き」の項目にはこうある。「酒は百薬の長、とことわざにありあmすが。・・・・酒は毒薬の長と、ということわざもあります。他にも。酒極まって乱となる。酒と朝寝は貧乏の近道。酒は飲むとも飲まるるな・・・再びご用心。」
 秋山さんは、1943年4月27日生まれなので私よりも4歳年長なだけだ。1965年に漫画家デビューして、『浮浪雲』の連載が終了した2017年まで、42年の間漫画家として活躍していたらいい。享年77というのは最近では早い方だと思う。こんど、「アシュラ」を読み返してみたいと思う。ご冥福をお祈りする。

<追記>自分を主人公にした『WHO ARE YOU』という本が、小学館から出ていると知った。この本には、酒の溺れる自分を冷静に客観視して描いているとと紹介されていた。もしかしたら、秋山さんは酒に溺れたこともあって、「ほろ酔いで長生き」することが至難の技であることも知っていた。これは、「男の行儀」で知られる伊集院静さんも同じだと思う。この視点から見ると、町田康さんの『しらふで生きる』で書かれたことは凄い。「人酒を飲むのではなく、酒人を飲む」のほうが現実に近い、私も昨日から、次回の健診の8月11日まで何とか禁酒(節酒)をしようと思う。

 <追記2>
 朝日新聞の夕刊(2020年7月25日)の「惜別」という欄の一つに、「漫画家 ジョージ秋山さん」という追悼文を、小原篤さんと方が書いていた。この記事から少し紹介しておきたい。ジョージ秋山さんは、本名を秋山勇二さんというのだと知った。放送作家の秋山命(いのち)さんは長男だという。
 <人肉描写などが批判された「アシュラ」(70~71)はs、主人公アシュラがやがて仏門に入り「命」と名づけられるという構想だった。物語はそこまで至らず、名は息子に託した。「命を大切に、ということじゃない。父の作品を読んでそう感じた。30代半ばになって聞いたんです。『命がけって感じだよね?』。父は小さくうなずきました。父自身が、この世界を命がけで戦い抜け、と考えてきたひとですから」>
 ジョージ秋山さん、格好いいな!私は息子をもったことがないが、息子にこのように言われる父親がいるんだなと感じた。(2020年7月28日)