TomyDaddyのブログ

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私の「医人」たちの肖像― (110) 西岡久壽彌さん④とインタビュー「第8回国際肝炎・肝疾患国際会議開催に向けて」~1993年2月1日(月)

(110)西岡久壽彌さん④とインタビュー「第8回国際肝炎・肝疾患国際会議開催に向けて」~1993年2月1日(月)

 

   1993年2月1日(月)。西岡久壽彌先生(日赤中央血液センター・技術顧問)を、広尾の日赤中央血液センターに、午後から訪問して、5月開催予定の国際肝炎・肝疾患国際会議についてインタビューした。
 インタビューの中で西岡さんが言われた「ウイルスは大きな遺伝子」という表現が興味深い。ウイルスは人の病の感染源となる一方で、分子生物学のツールとなった。この時から、30年に及ぶC型肝炎ウイルスとの戦いは文字通り遺伝子工学の方法を駆使するものであった。
■インタビュー「第8回国際肝炎・肝疾患国際会議開催に向けて」■
●1993年2月1日(月):
 
第8回国際肝炎・肝疾患国際会議は、1972年から3年に一度の頻度で開かれており、終了後に会議の成果が“Proceedings of the International Symposium on Viral Hepatitis and Liver Disease”というタイトルで、米国の出版社Williams Wilkinsから出版されていた。それまで会議は、アメリカやヨーロッパで開かれており、肝疾患の患者の多いアジアでの開催は初めてであった。今も続いているのだろうか。
 
インタビューでは、以下のようなテーマでお話を伺った。
(1)ウイルス肝炎・肝疾患会議とは?―この会議の歴史と目的、
(2)会議の主要テーマは―トピックスと海外からの参加者について、
(3)C型肝炎対策―最近の展開 : 肝癌との関係、血液対策、
(4)その後のウイルス疾患の動向―とくに日本のAIDS対策は。
 
このインタビュー内容を、医学界新聞・第2038号に掲載した。バックナンバーが手元にあったので、興味深い部分を掲示する。私が書いた冒頭のリードは、次のようだ。
 「ウイルス肝炎、とりわけC型肝炎HCV)に関する研究の最近の進歩は目覚ましい。HCV抗体を用いた診断はもとより、インターフェロン(IF)による治療、その適応、容量と使用法の研究が進められている。こんな中、ウイルス肝炎のAからEまでの基礎・臨床・疫学に至る各分野の専門家が一堂に会して、日進月歩の成果を交換する場としての第8回国際肝炎・肝疾患会議が、きたる5月10~14日の5日間に亘って、浦安市シェラトン・グランデ東京ベイホテルで開かれる。そこで、本号ではアジア地域で初めて開かれる同会議の西岡久壽彌組織委員会会長に会議の概要、参加者のプロフィール、メイントッピックス等々について伺った。」
 以下に、興味深い部分を引用しておきたい


■ウイルスは動く遺伝子■
―肝疾患研究について、最近2~3年のトッピクスは何といっても、C型肝炎ウイルスHCV)の研究だと思いますが・・・。
 西岡 C型肝炎については、今度の会議のメインテーマの一つになるでしょう。HCVの基礎的な研究は、ちょうど今、第三世代のウイルス学と言えると思います。昔の古典的な組織培養や、動物実験による研究を第一世代とすると、免疫反応を使うことによってB型肝炎などがちゃんとわかってきたというのが第二世代のウイルス学なのです。そいうことで病原体がはっきとわかって、対策がすすめられるようになった。さらに、C型肝炎の研究においては、古典的なウイルス学、免疫反応で攻めきれなかったものが、遺伝子工学を導入することで診断方法が確立されて、きちんとその対策ができるようになった。それが第三世代のウイルス学と言えると思います。・・・・とくに、今日、第三世代のウイルス学の方法が、どんどん進められるだろうという時代になって、今やウイルスは大きな動く遺伝子というふうに解釈すべき時代になっています。
HCVウイル研究の先駆者も来日
―プログラムを拝見しましたが、B型肝炎のブランバーグ(Blumberg)、C型肝炎のホートン(Houghton)など有名な方々がたくさん来られますね
 西岡 メインゲストを紹介しますと、まずBlumberg、Krugmanお二人は日本の大河内一男先生と共にウイルス肝炎創始者のような方ですね。オーストラリア抗原の発見でノーベル賞を受けたBlumbergは、ご存じでしょうが、フィラデルフィアのフォックス・チェースから小和田雅子さんの留学していたオックスフォードのベリオール・カレッジの学長になっています。ウイルス肝炎の臨床像を初めて発見され、日米医学に貢献されたKrugmanさんも来られます。それから、Zuckerman、Purcell、Tiollias、H.Alter、Holland、M.Alter、Hollinger、Rizetto、Balayan、Lvov、Bradley など、非常に日本になじみの深いトップレベルの研究者が来られます。

C型肝炎ウイルスの発見がノーベル賞に―2020年■
2020年10月:
 C型肝炎ウイルスの発見が、2020年のノーベル生理学医学賞に決まった。B型肝炎ウイルス研究(オーストラリア抗原の発見)で、Blumbergがノーベル賞を受賞したのは、今から44年前の1976年だった。この間の肝炎ウイル研究の進展は目覚ましいが、44年の曲折を経過したともいえる。
 C型肝炎ウイルスHCV)については、別稿のシリーズ「私のC型肝炎ウイルス物語」で、詳細に経過を追ってきた。今回、C型肝炎ウイルスの発見がノーベル賞に決定とのニュースに接し、古い記憶が蘇ってきたので、振り返ってみた。1993年5月10~14日に東京で開かれた第8回国際肝炎・肝疾患国際会議の折には、私もノーベル賞受賞者のマイケル・ホートン、ハ―ベイ・オルターさんの講演を聞いた。
(2020.10.16)
(私の「医人」たちの肖像―〔110〕西岡久壽彌さん③とインタビュー「第8回国際肝炎・肝疾患国際会議開催に向けて」~1993年2月1日)