TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『首里の馬』(高山羽根子)を漸く読み終えて思うこと

 生協売店の雑誌コーナーで文藝春秋12月号を買ってきた。駅近の街の本屋が消えてから雑誌は近くのスーパーやコンビニ、生協の雑誌コーナーで買う。時には買いそびれて仕舞うこともある。毎年、3月号と9月号には芥川賞作品が載っているので買って大抵はよむことにしている。今年の9月号には二つの作品が載っていた。『破局』はだいぶ前に読んだ。3カ月も遅れて、『首里の馬』を漸く読み終えた。読み始めてから、佳境に入り、肝心の首里の馬が登場するまでに読み進めていくのがチョット苦痛だった。やはり、小説って荒唐無稽でいいのだと思った。この主人公の所に突然出現した初めは訳のわからない動物が首里の馬だった。いくら小型だって、馬がブルーシートを敷いた家の中にいれてもらって大人しくじっとしているとは思えない。この作者はSFっぽいのが好きなのでこういう想像力があるのだろう。とにもかくにも最後まで読んだ。作者の高山さんは、1975年生まれで多摩美大を卒業した方だ。おまけに結婚までしていて、文章をかくことを「文章教室」で根本昌夫さんという先生に習ったんだという。根本さんの教室からは、数年前に芥川賞を受賞された若竹千佐子さんも同窓生(こういうのだろうか)だったという。若竹さんの作品は、東北弁で自伝的な話だったので読み易かった。しかし、高山さんの「首里の馬」はやはり荒唐無稽すぎて話について行くのが難しかった。読んでから、「選評」を読むと中身がよくわかる。選んだひとの「選評」がまちまちで実に面白いのだ。
 <高山羽根子首里の馬」がずばぬけて面白い。きわめて「馬鹿馬鹿しい」発想の小説だが、この「馬鹿々々しさ」は」小説という物語形式の本質的魅力に触れている目覚しい達成だと思う。・・・・奇妙なユーモアに満ちた思考実験として第一級の作品と思う。>
 選者の一人の、松浦寿輝さんは絶賛していた。こういうふうに読むとよいのかと分かった気がした。読後感話は悪くはない。もう一つの受賞作『破局』の方がむしろ読後に気持ちがわるくなった。スポーツマンで筋トレしていて公務員試験にも一発で受かる好青年の大学生がセックスでは、可憐な少女の性欲に圧倒されてしまうという結末は実は奇妙で後味が悪かった。ともあれ、文学がいまいきることの孤独と収まりの悪さをえが描き出しているのはわかった。