「楢山節考」 1957年刊 深沢七郎「姥捨伝説が問いかけるもの」という、興味深い記事が朝日新聞(2021年3月3日)に載っていた。
舞台は「信州の山々にある村」。口減らしのため。年寄りは七十になると山深くの聖地「楢山」に捨てられる掟があった。74歳の私には聞き捨てならない物語だ。
子が親を背負い、山奥に捨てに行く、姨捨伝説をモチーフにした深沢七郎の小説『楢山節考」は1957年に刊行された。私の生まれた10年後である。平均寿命が50歳を越えるくらいだった当時としては70歳は年寄りも年寄りだったに違いない。深沢にはどんな執筆動機があったのか。作品を書く前に、深沢は肝臓がんの母をみとっていたのだという。・・・深沢は自ら老いてから、埼玉に「ラブミー農場」を開いて、若者と農耕生活を過ごした。その頃のエッセーで、「死ぬことは清掃事業の一つですね。ゴミがたまればゴミ屋が持っていってくれるように」「自然死(自殺ではなく)人間にとって一番ありがたいこと」と書いているのだという。
折も折、大学時代の旧友のRB君が入院したとの知らせがきた。病名は「廃用症候群」だという。昨年、10月23日に、明治神宮前で会う約束をしたが、彼が地下鉄乗り換えができなくなってしまい会うことが叶わなかった。その後に老化が進行してきたらしい。私たちの「おさらば」のときが近ついているのである。『楢山節考』を読み返してみたい。(寺下真理加さんの署名記事より、概要を紹介した)
■「棄老」と現代の高齢者をめぐ動き■
1947年 平均寿命 男性50.06、 女性53.96歳 (私が生まれた年だ)
1957年 深沢七郎『楢山節考』刊行、 翌年に映画化(木下恵介監督)
1963年 「老人福祉法」の制定で、特別養護老人ホームやホームヘルパーが導入
1970 年 65歳以上の人口が7%越え
1983年 今村昌平監督の「楢山節考」
1992年 デイサービス開始―認知症の人を対象に(当時は、老人の呆け)
1998年 赤瀬川原平『老人力』刊行
2000年 介護保険スタート
2004年 厚労省が「ちほう」を「認知症」に
2005年 高齢者虐待防止法が成立。
2007年 日本は65歳以上が、21%を超えて、超高齢化社会へ
2012年 100歳以上の高齢者が初めて5万人を越える
2020年 新型コロナウイルス感染拡大。高齢者施設でリモート面会を導入。