『あと千回の晩飯』というエッセーを山田風太郎という作家が何かの雑誌か、あるいは夕刊新聞か何かに連載していたことがある。あと千回というのは、晩飯を毎日食べるるとすると、あと三年くらいで終わりかなという意味なんだろう。山田風太郎は、もともとは東京医大卒の医師であるらしい。医師というより、「くノ一忍法帖」というたぶん奇想天外の小説の作者で有名である。一方で、『戦中派不戦日記』が残されてこちらが当時を知るために面白いらしい。
本日、急に山田風太郎と想い起したのは、「あと千冊くらいは本を読みたい」と思ったからだ。1年百冊としても10年かかることになる。今日は、高橋源一郎さんの『私生活』と、亀山郁夫さんの『新カラマーゾフの兄弟上』と亀山訳『カラマーゾフの兄弟1』と田山花袋の『布団』を少しずつ読んだ。とくに面白いのは、「新カラマーゾフ」と「カラマーゾフの兄弟」の構造としてのアナロジーである。亀山郁夫さんは、どんな着眼からこんな小説を思いついたのだろう。1995年という、地下鉄サリン事件が起きた年だ。登場人物の黒木家の家は、西武新宿線の野方にあるので舞台はなじみがある。肝心のドストエフスキーの「カラマーゾフ」は、「第一部 第3編 女好きな男ども」まで読み進めてきた。「4 熱い心の告白-一口話の形で」は、長兄ドミートリーが、弟のアリョーシャにはなす場面である。なんとも饒舌な語りなのだが、これが面白い。亀山さんは、この辺りのドミートリーの話しぶりを応用して、「新カラマーゾフ」のミツルを描いているようだ。
今日は、めちゃくちゃ読書の一端をかいておいた。