TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『引退しない人生』(曽野綾子)を読む

 曽野綾子さんのエッセイを好んで読んできた。このクリスチャンの小説家は厳しいことを抜け抜けと言う。臆面もなくなくものを言う。曽野さんの夫の三浦朱門さんも作家であった。私は三浦朱門さんの本を一冊も読んだことがない。晩年には文化庁長官までやった。遠藤周作吉村昭とかと同世代の人だった。曽野綾子さんと三浦朱門さんは、曽野さんがまだ女子大生の時に学生結婚をしている。子供が一人いる。曽野さんは、一人息子をモデルにしてと言うか、子育てのなかから『太郎物語』という小説を書いていて、読んだことがある。

< 誰も困らない

 誰がいなくても、世界は着実に動いて行くのである。中年以後に意識すべきことは、自分がいなくても誰も困らない、という現実を認識することである。自分がいなくてはいいなんて情けない、というかもしれないが、誰がいなくてもこの世はちゃんと運営されるから、私たちは基本的な安心を確保されている。(『中年以後』)>

 これは安普請の家のような本だ(御免なさい)。曽野さんが、いろいろなところで書いた七つの本から美味しいところ(箴言とかアホリズムというか)を抜き出して、「引退しない人生」というタイトルで一冊にまとめ直している。海竜社という会社の本だ。こういう本作りを、著者も初出の出版社も許容しているのだ。

 別のところから引用する。

<「公害」に気をつけて

 服装に関心がないのはこの頃間違いだと思うようになった。若い人はまあいいとしても、おみ苦しい年寄りが、身なりに気を使わないなんて「公害」である。そして都会というところはほんんとうはだらしがなくしていたい絶対多数の怠け者(私もその一人)にも、否応なしに少しばかりの緊張を強いるところなのだる。(『都会の幸福』)>
 この文章を読むと全くその通りである。森村誠一さんも、「老いる意味」みたいな本で同じことを言っていた。齢をとったら余り貧相なだらしのない服装をしていてはいけない。自戒としてそう思う。曽野さんは、それを「公害」とまで言う。

 <美しく生きるには

 晩年に美しく生きている人というのは、できればごく自然に、それができなければ歯を食いしばってでも、一人で生きることを考えている人である。(『晩年の美学を求めて』)
 こういう文章は本当に「箴言」であると思う。曽野さんは強い人なんだ。夫の三浦朱門さんが亡くなってから、『夫の後始末』という本を書いた。面白く読んだ。タイトルは編集者が売るためにつけたのだろう。 中身は、最後に認知症になった夫を、如何にして見送ったかという本だった。あの本を書いてから、もう4~5年は経っている。曾野さんは今も元気で本を書いている。最近、上野千鶴子さんが「おひとりさまで最後まで生きる」というような本を書いている?これも読んでみたい。
 そういえば、私の家内のYさんも、曽野さんみたいに強い女性である。歯を食いしばって生きている。だから美しいと思う。五年前に小脳出血で倒れたが、歯を食いしばって歩行訓練をして歩けるようになった。歩く姿が美しくなってきている。

 今日も5冊の本を併行して読んだ。『布団』『カラマーゾフの兄弟』『私生活』ほか。ところで、上に紹介した曽野さんの本は、「上手に引退してこの世から消えましょう」という意味の本だと解読した。