TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

歌集『前線』(書肆侃侃房)のこと

 大阪府内の病院で救急医として働いている犬養楓(かえで)さんが、歌集『前線』を出して話題を呼んでいるのだという。「コロナ禍医療の前線を詠む」という興味深い記事が朝日新聞朝刊(2021年月21日)に載っていた。記憶と記録のために、無断引用しながら概要を紹介したい。犬養楓さんは、筆名ということだ。実際の犬養さんは医師で日々忙しく働いているのだ。その忙しさの中で自らを省みて立ち向かうエネルギーを「歌」が与えてくれるのだろう。

 咽頭ををぐいと拭った綿棒に百万人の死の炎(焔)見ゆ
 ⇒ PCR検査の検体をとる動作を詠っている。現場の人でないと詠めない歌だ。

 いつまでも読み終えられず仮眠室の「ゴルゴ13」は開き癖あり
 ⇒ 仮眠室で休む暇なく働いているんだとわかる。「ゴルゴ13」を読むんだから、若い(34歳だそうだ)男性医師なんだろう。

 この波を越えたら出そうと退職の書類が三度眠る引き出し
 ⇒<筆名ゆえ、本音で詠むことができたという。「もちろん責任感をもって診療にあたっていますが、使命感だけで乗り切るのは難しい。自分の場合は普通なら心に秘めて過ごす思いをオブラートに包まずに短歌で表現したことで、翌日からまた少しすっきりした気持ちで診療を読けることができた」と振り返る。>
 そうか、犬養さんは短歌で乗り切っているんだ。短歌は、生きることを強くするんだ。

 息継ぎの時と場所とを探しつつ泳ぎ切らねばならぬ一日
 マスクでも感謝でもなくお金でもないただ普通の日常が欲し
  ⇒そうなんだ。短歌は自らの日常ををありのままに詠みこんでいくのでもいいんだ。

 世の中のも体と同じ真っ先に弱き所に痛み現る
  ⇒犬養さんは、短歌をたしなんでいた亡き祖母の影響で歌を読み始めたのは、18歳の頃なんだという。「救急外来は社会の縮図。社会に漂う閉塞感が真っ先に弱い立場の人に痛みとして現れる。」

 ラソンと同じさ 遥かゴールまで次の電柱目指して走る
 ⇒ 収束の兆しがみえないなか、とにかく今を乗り切るために働いるのだとわかる。全くいまほど医療従事者には頭がさがる。

 (以上、佐々波幸子さんの署名記事から、まとめた)