TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『アバね、ゲンさん!』(宮下全司作)を借りて来て読んだ

 『アバね、ゲンさん!』は、1998年に、岩崎書店からでている。「童話だいすき」というシリーズの一冊だ。小学校三年生の「健ぼう」と隣の一人暮らしのお爺さんである「ゲンさん」との交友のお話だ。「健ぼう」は、頭の後ろに禿があるので、「ハーゲン」というアザナで呼ばれている。「健ぼう」は、川で溺れた時に、「ゲンさん」に助けられたことがある。「ゲンさん」は命の恩人でもあるわけだ。「ゲンさん」は、奥さんに先だたれ、一人息子の「良おじさん」は東京で働いている。一人暮らしの「ゲンさんは町に買い物に行って、家へ帰る道を忘れてしまったことがった。そのときから、「健ぼう」のお母さん(加代さん)が、名札を作ってくれて、首にかけている。「健ぼう」と「ゲンさん」は友だちで、畑のスイカを勝手にとって二人で食べたりした。しかし、「ゲンさん」は少しずつ、人の顔もわからなくなってしまった。民生委員のひとが心配して、息子の「良おじさん」が4WDワゴン車で迎えにきて連れていくことになった。

 <「おじさん、いつぃまでも元気でね」
  って、大きな声をだすと、
 「健ぼう」
 って、いった。
 「あれ、きょうのゲンさんは、ぼくがわかるんだ!」
 って、びっくりすると、村の人たちがわらった。
 ゲンさんは、むねにぶらさげた<まいごふだ>をふって、ぼくに、
 「アバな」
 と、いった。>

 「アバな」とは、群馬弁で、「またね」という意味である。「アバよ:」とも言う。
 この本には、「はっとばす」とか、「はしっこい」とか、懐かしい群馬の言葉が出てくる。「はっとばす」は、張り飛ばす、という意味だ。「はしっこい」は、「すばしこい」という意味だ。
 このお話の作られた頃(1998年)には、まだ、「呆け老人」という言葉も出ていなかったらしい。齢をとれば、身体が弱くなるだけでなく、頭のほうも衰えてくるのを、みんな当然と思っていた。そして、みんなそのうちに、この世からオサラバした。医療の進歩が「認知症」を生んだのだろう。

 ところで、作者の宮下全司さんは、群馬県内の盲学校、聾学校、高校の教師を経て、この本を描いた頃(1998年)には短大講師をしていた。1931年生まれだから、健在なら90歳である。この年長の従兄に会ってみたかった。