TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

朝日歌壇を読んで思うこと

「ワクチンを待ちつつ夏を老いにけり」(愛西市 小川弘)⇒長谷川櫂

 今年の5月はまさに上の俳句のような心境だね。実にうまく切り取っている。
 さて、今日も朝日歌壇を読んだ。感じたのは、社会詠が選ばれていると思った。福島の原発の処理水のことを詠んだ歌が多い。それは、それだけ大きなことだが、何か重苦しい世相を反映している気がする。

原発に溜まる一方の「汚染水」を海に流すのに「処理水」と呼ぶ(交野市 遠藤昭)>
<処理水と言い換えらるる汚染水大きく開く鮟鱇の口(村上市 鈴木正芳)>⇒上記は永田和宏選:「三,四首目、言い換えの欺瞞性に、言葉を扱う我々は敏くありたい」が永田さんのコメントだ。

<プラごみが浮遊している海洋に間もなく始める処理水投棄(長野市 関 龍夫)>
<コロナ下に無人無音の聖火ゆく何を知らしめ何を繋ぐや(長野県 千葉俊彦)>⇒馬場あき子選: 馬場さの選んだ歌にも社会詠がおおいようだ。

<「路上飲み」「マスク警察」「帰省狩り」コロナは日本の言葉も汚す(観音寺市 篠原俊則)>⇒佐佐木幸綱選:「コロナ禍と言葉の関係をうたって鋭い、と佐佐木さんがコメントしている。篠原さんは、常連の投稿者だ。わかり易くって鋭い社会詠だと思う。
<三度目となれど対策は変異せずデジャヴのごとき夏がまた来る(西東京市 服部秀星)>⇒ これも佐佐木幸綱選: これも目先のみえないコロナの重苦しさを、変異せずとデジャヴという言葉で詠んでいるのが新鮮だ。

<雨音がやわらかだったふるさとの藁葺き屋根よ麦秋のころ(岐阜県 諏訪桂子)>⇒高野公彦選: 「麦秋」とは、麦の穂が実り、収穫期を迎えた初夏のころの季節。
<「処理水の放出」と言い「汚染水の委棄」とは言わぬ為政者たちは(観音寺市 篠原俊則)>⇒ 高野公彦選: 「政治家たちの言葉遣いの中にはゴマカシやズラシが折々ひそむ」と高野さんがコメント。篠原さんは、佐々木さんが選んだのと、2作品が選ばれている。世相を切り取る言葉遣いが巧みだ。

<金魚田の青き水面に雲映り雲の中より金魚湧き出づ(天理市 池田士郎)>⇒ 馬場あき子、佐佐木幸綱共選: はじめは情景が呑み込めなかった。水面に雲が映っているので、金魚が雲の中から出てくるように見える、っということか。これは、目で読んだ情景描写の歌と知った。

 以上り、今週の私の秀歌は以下にする。コロナ禍、原発汚染水と辛い現実を詠むのも大切だが、諏訪さんの個人詠もなぜか安心するね。

 雨音がやわらかだったふるさとの藁葺き屋根よ麦秋のころ岐阜県 諏訪桂子)