TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

忘れられない短歌のこと―垂乳根の母の釣りたる・・・

垂乳根の母が釣りたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども

この歌はよく覚えていて諳んじている。「垂乳根」は母にかかる枕詞である。この歌は多分、中学か高校の国語の教科書にのっていて覚えたのであろう。

 死に近し母に添い寝のしんしんと遠田のかわず天に聞ゆる (斎藤茂吉

 上の二つの歌は両方とも母を詠っっている。下のは有名な茂吉の歌である。茂吉は、斎藤家の養子となって、斎藤脳病院の院長になっていた。故郷で病む母の元にかけてつけて詠んだのだろう。
 のどあかきつばくらめ二つ梁にいて垂乳根の母は死に給うなり(茂吉)

の二つの歌をよく覚えている。茂吉という、医師であり歌人は淋しい人であったと思う。

 ところで、冒頭の歌の作者は、長塚 節だと知った。これも、有名な歌である。

小説「土」でも知られる長塚 節の歌なのだ。長塚は、正岡子規が格別に親しみをもっていた弟子の一人なんだという。口頭結核で35歳の若さで亡くなっている。

稲城図書館で、「精選 折々のうた(下)」を借りてきた。大岡 信さんが、随分むかしに朝日新聞に連載していた。同じ本に、こういう歌も載っていた。

 「ひとはみなひとり」と妻の言うときに薄刃の如きものに裂かれつ(高安邦世)

 歌は鋭く厳しく淋しきひとの心を切り裂くような情景を描いている。昨今の、朝日歌壇では、社会詠、世相詠が選ばれている。高安さんは、永田和宏さんの師匠だと思う。