TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

エッセイ「家族仕舞」(桜木紫乃)を読んだ

 稲城市立図書館に本を見に行ってきた。雑誌「すばる」3月号に、高瀬隼子「水たまりで息をする」が載っていたので借りてこようと探した。目についたのは「すばる」9月号(2020年)である。特集「表現とその思想 病をめぐって」というのが目についた。借りてきた。

 この号に作家の桜木紫乃さんが、「家族仕舞」というエッセイを書いていた。これを読んでみた。実に面白い。家族って何だったんだという思いが蘇ってきた。
 <自分の内面をひとことで言うならば、「愛情よりも先に責任を学んだ長女のなれの果て」だ。・・・>
 この、責任を学んだ長女のなれのはてが、あるとき、気が付いたのだ。愚痴をこぼす母に向かって、「自分の娘なんだから、何を言ったっていいと思うの」と叫ぶ。
 反旗をひるがえすと言うよりも、何かにきがついたのだ。子どもだった、娘も既に親となり別の家族を持っている。
<悪人たちはいないけれど問題が起こるのが家族。事情と事情が絡まり合うからこそ、話がややこしくなるのだ。>
 桜木さんは、小説を書く中で家族を客観化してきたのだ。
<「実家」という事件を本一冊分捜査してみてたどり着いたところは、男女を問わず「人間は弱い」だった。>
 最後に、母親が認知症になってきたところで、こう折り合いをつける。
<親の老いと自分の老い、双方と同じ距離の場所にいま立っている。見えてきたのは、「生きて見せること、死んでみせること、親の大きな仕事はそこにつきるのではないか」ということだった。>

 桜木さんは、作家だからまとめが実に上手い。たった、2ページのエッセイだが珠玉の文だ。

 ことほどさように家族とはやっかいなものだ。「おひとりさん」がほんとうは気楽あのかもしれないが、それでも、2歳くらいのこどもと過ごした日々は至上の幸せを味わった。

 桜木さんって、どういう作家だったかなと思っていたら、『ホテルローヤル』で直木賞をとったひとと知った。この本を読んだような気がする。ラブホテルで働く娘の話だったような気もする。エッセイと同じタイトルの『家族じまい』(集英社)という本も出している。