この本は、明治初期に活躍した日本初の聖像画師・山りんのことを書いている。朝井まかては、葛飾北斎の娘・葛飾応為を『眩』という作品で描いている。再び女性の絵師を描いた。
山下りんについては、『ニコライ堂の女性たち』で、中健之介・悦子さん書いたのを読んだ。
<開国して間もない明治6年、絵師になりたくて茨城の田舎の笠間から上京したりんは、明治10年に工部美術学校に入学する、西洋画を学んだ。さらに神田駿河台のロシア正教会でニコライと会い、イコン(聖像画)を学ぶためにサンクトペテルブルクの修道院に留学する。この留学の経緯と、ペテルブルクでのりんの生活は必ずしも意に沿うものでなかっことを、中村さんの本で知った。帰国して、ニコライ堂工房で模写を命じられたのは、平板で稚拙な古いイコンだった。これでは、近代西洋画の修行にならない・・・。しかし、<自己実現や自分らしさといった枷から離れることで、人は「自分」という枠からも自由なれるのだと伝わってきた。晩年のりんの清々しさたるや!>
この本の書評を、大矢博子さんが朝日新聞に書いていたので読んだ。
<本書のもうひとつの軸は当時の社会の描写だ。明治期の美術教育や印刷技術が詳細具体的に活写される。その一方で、対露関係が次第に軋み始める。・・・・時代とりん、両方の生命力に溢れた一冊である。>
書評はこう結ばれている。読んでみたい。