TomyDaddyのブログ

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私の「医人」たちの肖像(133)― 福岡伸一さんと『プリオン説は本当か?』を読みながら思うこと 〜2005年11月20日

 

(133)私の「医人」たちの肖像― 福岡伸一さんと『プリオン説は本当か?』を読みながら思うこと〜2005年11月20日

 

 稲城図書館に福岡伸一さんの書かれた二冊の本をリクエストした。直ぐに借りてきて読み始めた。①もう牛を食べても安心か(文藝新書、2004年12月20日)。②プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー(講談社 ブルーバックス 2005年11月20日
 この二冊の本は、ほぼ一年の間をおいて続いて出ている。もしかしたら、福岡さんは同時に執筆していたのかもしれない。切り口が少し違うだけで、プリオンに迫る同じテーマである。

プリオンアルツハイマー病」のテーマで、神経病理学者の石井 毅(当時、都精神研所長)さんにインタビューしたのは1985年2月21日(木)だった(私の「医人」達の肖像の第37回で紹介)。牛の海綿状脳症(狂牛病)の原因を探していた米国UCSF(カリフォルニア大学)のプルシナー(Stanley B. Prusiner)が、仮説上の存在だった感染因子をつきとめ、この因子を「プリオン」と命名したのは1982年のことだった。その後の進展の詳細を端折ると、プリオン研究の業績でプルシナーは、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
 標記の一連のプリオン研究の流れを鑑みながら、福岡さんの上掲の本を、読んでみたいと思いたった。「プリオン説はほんとうか?」は、以下のような趣旨で書かれているのだという。

「遺伝子を持たないタンパク質が感染・増殖するという新しい発病機構を提唱し、ノーベル賞を受賞したプルシナーの唱えるプリオン説は、狂牛病対策など公衆衛生にも、重大な影響を持ち、科学的事実として受け入れられている。しかし、プリオン説はいまだに不完全な仮説であり、説明できない不可解な実験データも多い。はたして、プリオン説は、ほんとうに正しいのか?」

 面白そうな問いかけである。読み終えてから、プリオン説は現在どうなっているのかインターネットでしらべた。福岡さんの本が出た2005年から17年経った現在、プリオン説を覆す研究成果はないようだ。この本は科学読みものとして実に読ませる。
 「第9章特異的ウイルス核酸を追って」のなかの C型肝炎ウイルスはいかにして捉えられたか、の解説は特に興味深く読んだ。C型ウイルス肝炎を自ら体験した私にとっては身につまされる話だ。「わらの倉庫から小さなピンを探すがごとき、先の見えない根気のいる作業」をして、マイケル・ホートンらが、遺伝子ライブラリーの中から、目的とする核酸の断片を釣り上げたのは、1989年のことだった。この結果として私のC型肝炎ウイルスは私の身体から排除された。ともあれ、福岡さんのこの本は一読の価値はあると思った。
(2022.3.1)

(私の「医人」たちの肖像―〔133〕 福岡伸一さんと『プリオン説は本当か?』を読みながら思うこと 〜2005年11月20日