<こだわりの理髪店へと五十年禿頭の夫四キロを行く(前橋市 荻原葉月)>
<全身で「大好き」「嬉しい」伝え合い子犬と孫は友だちになる(山口県 庄田順子)>⇒佐佐木幸綱選:
上に引いた二首は何方も素朴である。前橋の荻原さん、俳句も短歌も作っていて常連の入選者だ。禿頭の夫がいる御婆さんなんだと知った。山口の県の庄田さん、犬を飼っているんだね。
<アルバイトの女将(おかみ)を「おかあさん」と子が呼ぶときのかすかな痛み(和泉市 星田美紀)>⇒高野公彦選:
この歌を選んだ高野さんのこころは如何か? 作者は、ほんとうの実のお母さんを、母ちゃんとよんだが、「おかあさん」と呼んだことはなかった。
<職場には元の課長と前課長互いに気兼ねする再雇用(川崎市 小島 敦)>⇒永田和宏: 小島さんの歌はつまらんテーマだね。でも、こういうことってある。再雇用出来ているだけで実はよいとしなければならない。
<母の日はサプライズじゃなく希望を聞きながらのモンブラン買う(富山市 松田梨子)>⇒馬場あき子せん:
松田さんの歌をよむたびに、素晴らしい優しい娘さんの想いがする。
<住民と食事作りしロシア兵アンドリーウカ村に虐殺の無く(前橋市 荻原葉月)>⇒馬場あき子選:
荻原さん、禿頭の夫の歌と、ロシア兵の歌と、どのようにして全く違うテーマを歌に作れるんだろう。
<祖母と行くランチゆっくりと歩いたり話したり食べたり無意識に(富山市 松田わこ)>⇒馬場あき子選:
富山市の松田さん姉妹はほんとうに素晴らしい歌人だね。
<カチューシャを歌いしことも遠き春(簑面市 櫻井宗知)>⇒長谷川櫂選:
この句に、長谷川さんが、「何かやりきれない思い。カチューシャに罪はないけれど」とコメントしている。ロシアのウクライナ侵攻を念頭にしているのだろう。カチューシャは『復活』のヒロインのだが、ロシアの象徴としてとらえているのだろう。
<コメント>今週も、朝日歌壇と俳壇を読んだ。私の幼いこころには、くらい裸電球とこぼれてしまった菜種油の缶の想い出がある。
<全身で「大好き」「嬉しい」伝え合い子犬と孫は友だちになる(山口県 庄田順子)>
こんなに素朴に詠えばいいんだね。