TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『一兵卒』(田山花袋)を読んだ―哀しい話だな

 この作品は、日露戦争の最中ひっそりと死んでゆく一人の一兵卒の姿を描いている。岩波文庫版『蒲団』のあとに収載されていたので、ついでに読んでしまった。いままさに、ロシアとウクライナの戦争が進行しているのだが、118年前には日本がロシアと戦争していたのだった。
 岩波文庫版の『蒲団』の解説を、相馬庸郎(つねお)さんが書いていたので読んだ。少し引用する。

<『蒲団』(「新小説」に掲載か)の出現は、二重の意味で「事件」となった。一つは、このさして大きくもない一作品によって、当時の文壇がいわば騒然となったことにかかかわる。・・・>

 田山花袋は、ある意味で自分でも実験的に社会に問う形で、『蒲団』を世に問うたもののようだ。内なる自分をさらけ出したのだから大変だったのだろう。

<・・・・自己や自己の肉親を文学的実験台にのせて、かれなりの自然主義的な人間認識を深めてゆこうとする「戦い」は、その後も『生』(明治41年)、『妻』(明治41年)と熱っぽく続けられてゆく。しかしまた当時の花袋が、『田舎教師』(明治42年)のような作品を持っていたことを決して忘れるべきではないだろう。>
 今回読んだ『一兵卒』は、花袋の人間的・詩人的資質の流れにある作品なんだという。ということで、『田舎教師』も読んでみたくなったので、稲城図書館にリクエストした。