TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『脳の方程式ぷらす・あるふぁ』(中田力著、2002年刊)を読み始めたー面白い「渦理論」

 『脳の方程式ぷらす・あるふぁ』(中田力著、2002年刊)を読み始めた。面白い。中田力さんに、もっと生きて研究をもっと進めて展開して欲しかった。中田さんは、2018年7月に急逝されてしまった。惜しい。中田さんは、亡くなる前の5月に、雑誌「Neuroscientist」に、「Fluid Dynamics Inside the Brain barrier」という論文を掲載したのだという。英文のタイトルから推測すると、その中身は、いま私が読んでいる『脳の方程式ぷらす・あるふぁ』の中野「脳の渦」に書かれていることではないだろうか。脳がどのようにして形成されるかという仮説の提案である。

<脳の形は熱対流の法則に従った自己形成から成る。「恒常状態」と「形態」とですべての機能を作りあげる、母なる自然の大傑作なのである。>
<大脳皮質とは、自然の掟に従いながら必然的な進化を進めた脳が必然的に発生させた精密機械である。>

 いや、頭のいいひとはいるものなんだと感心する。実のところ理解は半分である。しかし、脳の自己形成のところを読むと、グリア細胞が発砲スチロールのような軽くて柔軟な充填剤のような役割をしているとの仮説は実に面白い。かつ、そこに水が介在する。ここのところが、2018年に掲載された英文の論文の中身ではないだろうか?
(今日は、ここまで、続く)(2023.5.7)

 後半の項目「言いたい放題」から、「急がば回れ」「禁断の果実」まで、一息に読み終えた。もちろん、数式のところは飛ばしたりしたが、おおむねは読みこなした。中田さんは、脳の構造を解析することから、その機能も含めて「脳はどのようなものか」を仮説として提出した、結論は、「母なる自然の」いわば施しもの(賜物)が人の脳なのである。

 <脳は豆腐のような組織である。柔らかくて、指をたてたらすぐにつぶれてしまう。そのくせ、人間が作ったどのような精密機械よりも繊細で高度な装置である。>

 脳は、頭蓋という硬いケースの中にしまわれている。硬いタッパーの水に浮かぶお豆腐のようなものだ。ところが、頭蓋という硬いケースは、中心部は空洞にして二重構造になっていて、中の水と外の水には連絡道があるので、外からの衝撃は上手く吸収されて中にあるお豆腐のような柔らかい脳は保護されている。

 さて、中田さんの脳の本のキーワードは、LGSとELDERである。なんだかわからないので引用しておく。

 前著『いち・たす・いち」の「意識の根源」からの転載である。

<意識の基本的な行動がニューロンのネットワークで説明しきれない事実は、意識の根源がニューロン以外の要素を含んでいることを強く示唆している。筆者はその実態を「LGS(lattice gas layer)」と名づけた。これはニューロンが脳を形成する最小機能単位でであるという脳科学の中心教義(central dogma)への挑戦である。>

「LGS」は中田さんが名づけたんだという。さらに、次のような説明もある。

<LGSの基本をなす構造を筆者は、「ELDER(Electron-dense Layer and Dendritic Ramification)」と名づけた。これがグリア細胞が形成する高電子密度層と皮質の第一層に存在する錐体細胞樹状突起とが作るシナップシスのような構造を意味する。高電子密度層と樹状突起とのあいだはアセンブリーによって水の含有率が調節された空間である。>

 上に引用したように、脳の構造と機能を説明するうえで重要なキーワード(上で太字にした)LGSもELDERも中田さんが名づけた。説明をよむと分かるような気がするが、「そうなんですか」と思って読んだ。

<大脳が進化の過程で生まれて来る中で、発砲スチロールのような保護機能を備えたグリアの作る構造に高度な機能が神された。もともとは空調装置であった熱の流れが、ELDERを内在するLGSを作りあげたのである。

ヒトは二足歩行を始めたことで言語を獲得し、鳥類は飛行を始めたことで、音楽を獲得した。

 わからないなりに、最後まで読んできた。最後のところで、中田さんはこう書いている。

<ふと考えてみると、地球上にどんどん増えている害虫はヒトだけかもしれない。>

<繰り返し叫ばれた心有る人たちの忠告無視しづづけた人類は、地球そのものを何度も破壊可能な量のプルトニウムを作り出した。プルトニウムとはもともと地球に損z内しなかっ元素である。>

 中田さんは、この本で何を訴えたかったのだろう。いまとなっては、尋ねることはできない。結末の文章が実に素晴らしいというより、予言の言葉のように感ずる。

<ヒトという種が進化の過程で勝ち取った最大の武器は前頭前野の機能である。そこから定義されるヒトは、「理性を持ち、感情を抑え、他人を敬い、優しさを持った、責任感のある、決断力に富んだ、思考能力を持つ哺乳類」である。

 もしも、人類の誕生が地球にとって何らかの意味を持ったものであったとするならば、それは、前頭前野の機能を十分に生かしたものでなければならない。

 母なる自然は、意識をもつすべて生物にこころを与えた。

 そして、こころとは、どうのように小さくとも、絶対粗末に扱うことの許されない、崇高な存在である。>

 中田さんのこの結末の文章の美しさ、素晴らしさは何だろう。

<理性を持ち、感情を抑え、他人を敬い、優しさを持った、責任感のある、決断力に富んだ、思考能力を持つ>
 まさに、ひとの一生は人格の陶冶にありという言葉そのものではないか!
 ひとまず読了とする。(2023.5.7)