TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

村上作品は向こうから僕の目の前にやってくる!

 「とても悪いと思うけど、あなたと一緒に暮らすことはこれ以上できそうにない」、妻は静かな声でそう切り出した。そしてそのまま長いあいだ押し黙っていた。

(「村上春樹騎士団長殺し』第1部現れるイデア偏 2:みんな月に行ってしまうかもしれない」より)
 
 冒頭のような場面に遭遇したら僕には耐えられるだろうか?
 村上春樹は僕にとって不思議な作家である。このほぼ年代を同じくする(2歳年下かな?)作家が「ノルウェイの森」を発表したときには上下2巻の単行本を買ってすぐに読んだ。そして上巻を電車の網棚に置いて無くしてしまった。この時に初期の作品の文庫本「風の歌を聴け」「羊をめぐる冒険」を買って読んだ。たしか北海道の風景がでてきたような気がする。その後20年近くは村上春樹から離れた。2011年に退職してから「1Q84」の第1巻を図書館で借りて読んだ。主人公が首都高速の渋谷線の途中で”異界”に迷い込むあたりが興味を惹いた。2巻以降が借りられなので待ち切れずにアマゾンで2~3巻を購入して一息に読んだ。読み始めると止められずに最後まで読む。だがあとには余り印象が残らない。ただ別の作品を芋ずる式に読みたくなる。そうすると村上作品は向こうから僕の目の前にやってくる。郵便局のご自由にお持ち下さいの棚(私設書棚)に「ねじまき鳥クロニクル」が置いてあった。頂戴して読んだ。すると「海辺のカフカ(上下)」も読みたくて稲城図書館で借りて読んだ。そして今回、図書館の返却棚で『騎士団長殺し」(上)が向こうから姿をみせた。早速借りて読みはじめた。導入部の舞台が小田原(箱根の入り口)の山の上にある画家の持ち家であることも箱根が好きで御殿場からの道を良く通るぼくには好ましい。村上春樹は履歴を読むと早稲田大学在学中に喫茶店を経営していたという。早稲田大の裏手にあたる椿山荘の辺り江戸川橋近辺に住んでいたらしい。喫茶店を開くくらいだからコーヒーを淹れ、パスタを茹でたりチョットした料理をつくることや洗濯物を干したり畳んだりすることも得意だ。そして小説のタイトルに頻用されているように音楽への造詣が頗る深い。大学時代から空疎なというようなアルバイトなぞしたことなくて職業としての小説家になった作家なのである。格好いいシティボーイだ。毎年10 月になるとノーベル賞の騒ぎに名前が上がってくる。今年はノーベル財団の選考委員の不祥事とかで文学賞の授賞が見送られたので静かだった。「村上作品はノーベル賞とは違うんじゃないかな」というのが僕の見方であるが・・・。こうして一昨日から村上春樹ワールドにはまっている。主人公の僕が小田原で会う「免色渉」という人物が謎だ!村上の登場人物の名前の付け方に特徴がある。「免色」とは「色のない」という意味だろうか?ドストエフスキーのたとえばカラマーゾフ(黒いという一族)と似た名前の付けかただ。