(112)Arvid Carlssonさんと座談会「神経伝達物質―最近の進歩」~1992年10月23日(金)
アルビド・カールソン(Arvid Carlsson)さんが、第7回東京都精神研国際シンポジウム「精神分裂病の生物学」に参加のため来日した。1992年10月23日(金)。カールソンさん(スウェーデン Goetebors大学教授・薬理学)を囲んで「神経伝達物質―最近の進歩」という座談会を、東京・湯島のホテル・ガーデンパレスにおいて、午前11時~午後13時まで収録した。カールソン著による神経伝達物質に関する単行本(翻訳)を担当した医学書籍部のTOさんからの提案で、カールソンさん来日の機会を捉えて実現した座談会だった。
■座談会「神経伝達物質―最近の進歩」■
●1992年10月23日(金):
座談会「神経伝達物質―最近の進歩」の日本側出席者は、神経学の楢林博太郎先生(順大名誉教授・神経学)と精神医学の飯塚禮二先生(順大教授・精神医学)であった。
「神経伝達物質―最近の進歩(Dr.Arvid Carlsson・楢林博太郎・飯塚禮二)」のタイトルで、医学界新聞・第2071号(1993年・12月6日付)に、収録した座談会を掲載した。掲載日が遅れたのは、Arvid Carlsson /Lena Carlsson著『脳のメッセンジャー(訳 楢林博太郎・飯塚禮二、医学書院 発行)』の出版(1993年8月)を待っていたからだった。
その翌年、1994年にカールソンさんは、日本国際賞(Japan Prize)を受賞された。受賞理由は、「ドーパミンの神経伝達物質としての作用の発見と、精神・運動機能とその障害における役割の解明」というものだった(「医学界新聞」第2083号、「1994年度日本国際賞発表」)。
■神経伝達物質と「こころ」の座としての脳■
座談会掲載に際して、冒頭に次のようなイントロを書いた。
「1950年代におけるクロルプロマジンをはじめとした抗精神病薬の発見は、それを契機として脳の情報伝達が化学伝達物質(メッセンジャー)によって媒介されていることを明らかにした。同時にこの知見は精神(こころ)の座として脳研究に突破口をもたらすものと期待されている。」
座談会の内容は(1)精神分裂病と神経伝達部室、(2)パーキンソン病とドーパミンの二本柱で、紹介した。ちなみに、精神分裂病(schizophrenia)が統合失調症へと、日本精神神経学会によって名称変更されたのは、この時から10年後の2002年である。
■2000年ノーベル生理学・医学賞を受賞■
カールソンさんは8年後の2000年、エリック・カンデル、ポール・グリーンガードと共に、ノーベル生理学・医学賞に輝いた。受賞理由は「神経系の情報伝達に関する発見」だった。ドーパミンがノルアドレナリンの単なる前駆物質でなく脳の中の神経伝達物質であることを、カールソンさんは1950年代に実証した。さらに、神経伝達物質ドーパミンとそのパーキンソン病における働きに関する研究を進めた。
カールソンさんのことをインターネットで検索すると、88歳時(2011年)の白髪の写真が載っていた。座談会に挿入した写真は26年前だから当然だが、カールソンさんは60歳台で縦縞シャツに蝶ネクタイを締めて微笑んでいた。1923年1月25日、スウェーデンのウプサラで生まれ、2018年6月29日(95歳)で逝去された。
(2019.5.16)
(私の「医人「たちの肖像―〔112〕Arvid Carlssonさんと座談会「神経伝達物質―最近の進歩」~1992年10月23日」