TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

私の温故-(1)歩く


歩く
―這えば立て、立てば歩けのー

あるく
えきまであるく
池袋の地下道をあるく
あるく
本郷の街をあるく
あるく
何のためにあるく
勤め先に着くためにあるく
あるく
何のために何処へ
そんなことを問わずに
あるく
跳ばずにあるく
心がとばない
筋肉がはずまない
あるく
それでもあるく
あるく
あるくとは
かんがえるに近いかと考えたりして
あるく
むなしいから
あるく
何がなんだかよくわからないから
あるく
創成川に沿って
あるく
鏑川に沿って
あるく
ネヴァ川に沿って
あるく
池袋の高速道路の下を
あるく
たいていはひとりで
あるく
あるくのは生きるに近いのか
そんなことを思いながら
あるく
西四条通りを
あるく
停止している車のドアに
ひたいをぶちあてて血を流して
あるく
若い男のぼくが
あるく
そういえば
死んだSのあるき方は
どことなくスタスタしていた
そういえば
死んだNのあるきかたは
のろのろしていた
そういえばロシアに行ったKのあるきかたは
ひょうひょうとしていた
ああ、あるく
おれがあるく
あるくとはなあ
生きることに近いのだ
おれがあるく
あるく
「這えば立て、立てばあるけのー」
いっさいの次女が
あるく
あるきはじめる
あるく
いっさいの娘よ
いっさいは歩くことから
はじまる
あるき
あるく・・・・・

(1978・9.28)