(1)エイズ登場1981~1983
エイズはAcquired Immunodeficiency Syndrome(AIDS)の頭字語を日本語読みしたものだ。それも当初は「エイ・アイ・デー・エス」であったように思う。エイズという名称はその疾患の特徴を示す文字通り「獲得性免疫不全症候群」である。ニューヨークで1978年、1979年に各1例が初めて報告されたが何れもKaposi肉腫であった。その後、カリフォルニア、ハイチ等でも患者が発見され、その疫学的、病因論的解析が待たれていた。
■急増する米国のAIDS―同性愛者・薬剤常用者・血友病患者等に発症■
医学界新聞の第1548号(1983年5月16日)号では、一面で上記のタイトルでエイズの動向を紹介した。この記事は先輩記者のSH君がまとめた。
「1981年に初めて記載されたAIDSの患の76%が同性愛者であった。しかし、その後は,同性愛者だけなく血友病患者、小児の症例も含め(1983年4月7日付)CDC(Centers for Disease Control)調査では、米国で1300例の患者が報告されていた。」
上で紹介した米国のエイズ動向は医学誌(New England Journal of Medicine)、科学誌Science(1983 March),週刊誌Time(1983,27 March),等から情報を得た。ニューズ・ウイーク(News Week)誌、4月17日具号(1983)は大々的にエイズ特集を組みEPIDEMICと大きくゴシック体で表紙にキャッチフレーズを付していた。”The Mysterious and Deadly Disease Called AIDS May be Threat of theCentury. How Did It Start? Can It Be Stopped ?“
この時点ではまだ日本ではエイズ患者の報告はなく対岸の火事のように日本のマスコミも鈍感であった。エイズの登場と時を同じくして、1981年から医学領域の業界紙「医学界新聞」の記者となった僕は、疾患としてのエイズの登場、エイズウイル発見をめぐる動向、そしてエイズ治療薬の開発等を医学研究の周辺で見る機会に恵まれた。特異な病として登場し40年後の現在では感染症の一つとなったエイズ。しかし、エイズという病は撲滅されてはいない。この病について「私の見た『エイズ文化史』逍遥」のタイトルで記録することにした。