令和7年1月2日(木)、7時前に目覚めて書棚なのファイルを眺めていたら、興味深いコピー(新聞記事)が出てきた。マリオ・バルガスリョ氏と大江健三郎の往復書簡だ。「往復書簡 未来に向けて」というタイトルで2週連続でバルガスリョ氏から大江健三郎さんへの書簡の(紙上)連載であり初回が「現実世界の悲惨や不完全さを認識する力をもたらす文学」というタイトルで、2回目(1999年3月3日付)は「反戦論の足場づくりへ民主主義への道進もう」という大見出しがついている。先日、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』を読んだ折に、『百年の孤独』から大江健三郎の『万延元年のフットボール』の背景の類似点のことを知った。そのときに、随分、前に朝日新聞でラテン系の作家と大江健三郎さんの往復書簡を読んだことを思い出していた。これが、本日見つけた新聞記事だった。往復書簡なのだから、バルガスリョ氏か大江さんから大江さんからバルガスリョ氏への手紙(往便)があることになるがこちらは手元になかった。まずは、記憶と記録のために件の新聞記事を引用しながら読んでみたい。
初回の手紙(上)の冒頭はこうだ。
<親愛なる大江健三郎 第二の手紙で、あなたが上田敏博士のリハビリテーション医学の理論を小説を構想するときの思考過程と結びつけ、さらに日本を今日の発展した近代国家に変容させたトラウマに満ちた特異な歴史の流れに結びつけているのに、私は心を奪われました。>
マリオ・バルガスリョ氏のことは全く知らなかった。
<本は読者の忍耐の見返りに、何を与えてくれるのでしょうか。強い生命力、深い感情、言葉に対する繊細な理解力、そして特に現実世界の悲惨や不完全さを十分に認識す
る力を、読者に与えてくれるのでしょう。>
マリオ・バルガスリョ氏について調べてみた。ウキペディアにはこう書いてあった。
<マリオ・バルガスリョは、ペルーの小説家。アレキパ出身。ラテンアメリカ文学の代表的な作家でありジャーナリスト。主な作品に『都会と犬ども』『縁の家』『世界週末戦争』など。1976年~1979年、国際ペンクラブ会長。2010年ノーベル文学賞を受賞。>
マリオ・バルガスリョさんは、大江健三郎さんへの手紙で「私あなたがほめて下さった『世界週末戦争』の人物を創造しました。「ナツバのライオン」です。」と書いている。
マリオ・バルガスリョさんのノーベる文学賞の受賞理由は、「権力構造の地図と個人の抵抗と反抗、そしてその敗北を鮮烈なイメージで描いた」とある。2010年のノーベル文学賞の受賞は、ラテンアメリカでの受賞は、1982年年のガルシア・マルケスの受賞以来で、ペルー国籍のノーベル賞受賞は史上初であるという。
大江健三郎さんがノーベル文学賞を受賞したのは1994年であるから、上記で触れた「往復書簡」(1999年)の11年後にマリオ・バルガスリョサさんもノーベル賞を受賞したのだった。そのほか、マリオ・バルガスリョサ氏は、ガルシア・マルケスとも親交があり、殴打事件(マルケスを殴った)も起こしている。実に興味深い人物だ。大江健三郎さんは、一作年(2023年)3月3日に88歳で死去された。マリオ・バルガスリョサ氏は、1936年3月28日生まれ、89歳で健在である。実に興味深い人であると知った。作品を読んでみたい。
(1)『世界週末戦争』(旦敬助訳、1988年、新潮社)
(2)『誰がパロミノ・モレ―ロを殺したか』(現代企画室、鼓直訳、1992年)
(3)『マイタの物語』(水声社、寺尾隆吉訳、2018年)
ほかにも、翻訳書が沢山出ている。