TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

渥美和彦さん逝く

渥美和彦さんが昨年2019年12月31日に死去した。91歳だった。私のシリーズブログ<私の「医人」たしの肖像>で何回か触れた。渥美さんが東京大学教授時代に10数年にわたってお世話になった。お世話になったというより、その頃、渥美さんの専門領域であった分野の国際会議が日本で開催された折に広報のための座談会を開催した。
 朝日新聞の訃報記事には、「人工心臓電子カルテなどを研究。漫画家の故手塚治虫さんと同級生で、漫画「鉄腕アトム」に登場する御茶ノ水博士のモデルの一人とされる。」と書いてある。

 私の知っていた頃の渥美さんは臨床医ではなく東大の医用電子工学教室の教授であった。人工心臓を山羊に入れて当時の生存記録を打ち立てた。レーザーの医療への応用、磁気の医療への応用、等々の研究をしていた。その頃は50歳台後半の働き盛りであった。実は東大教授の権威そのもであったので若輩記者の私はチョット苦手意識を持っていた。ところが、東大を退官して以降は西洋医学と伝統医学を統合する統合医療を提唱していた。

 以下に、渥美さんの「わが国に、いま、何故、統合医療が必要なのか」というエッセイから引用する。
 「最近、我が国のみならず世界各国では医療崩壊の危機が叫ばれており、医療改革を求める国民の声もいよいよ高まってきている。確かに、近代西洋医学は、この200年の間に次々と発見・開発された新しい科学技術の導入により著しい進歩を遂げ、各種疾病の治療や予防に大きく貢献してきた。しかし、心の癒しや個々の医療におけるQOLの向上など、個々のニーズには必ずしも応えることができなくなっている。
 そこで、米国において検討されたのが、鍼灸、指圧、マッサージ、カイロプラスティック、ハーブ、ヨーガなどの相補・代替医療である。しかし、これあは近代西洋医学を補完する役割は果たすことはできても、代替「することはできないことがわかってきた。そこで、新しい理想の医療の考え方として登場したのが、近代西洋医学と相補・代替医療、それに伝統医学を加えた統合医療という概念である。

 ここで、統合医療の定義をあげてみると、
 (1)患者中心の医療
 (2)身体のみならず、精神、社会、さらにスピリチャリティなど全人医療
 (3)治療のみならず、むしろ疾病予防や健康増進に重点を置く医療
 (4)ヒトが生まれて成人し、老化し、死ぬまでの一生の包括医療

などである。」

 長い引用になったが、渥美さんの統合医療の定義は近代西洋医学を否定するというものではなく極めて当たり前の全人医療概念である。『医者の世話にならない生き方』という本まで書いている。さらに興味を惹いたのは、心身統一合氣道会の藤平信一さんと対談をしている。2015年、渥美さんが86歳のころだ。冒頭で渥美さんがこう述べている。「わたしはいま、氣と言うものに大変関心を持っています。・・・・氣とはなになのか?私がやってきた近代医療というのは、人工心臓やレーザー医学、コンピュータによる病院の自動化など最先端の技術を使っていましたが、そこには氣の研究はありませんでした。しかし、医学を作り出したヒポクラテスは、氣のことを人間の中心にあって色々な病気を起こしたり治したりするものと説き、氣を養うことが重要と言っていました。・・・私自身、現在、難病にかかっていますが、西洋医学で治らないものでも、氣を使った統合医療で治るのではないかと考えています。」

 渥美さんと合気道との接点があったとは不覚にも知らなかった。この対談当時(2015年)から渥美さんは病と共に生きてきたようだ。渥美さんの到達した「統合医療」の概念は当然のものとして今後も求められていくだろう。渥美さんの医学・医療への貢献に敬意を表したい。ご冥福をお祈りする。