『ヰタ・セクスアリス』(森鷗外、新潮文庫)を昨日から読んでいる。これが頗る面白い。単に面白いというのではなくて教養と知恵と知識に溢れている。やはり生まれ育ちがあるのだと知った。「親ガチャ」は確かにあるのだ。これは自伝的な幼少期からの小説なのだ。主人公は生まれた津和野から父親の仕事の転勤で東京・本郷界隈に十歳ころに移って来た。
<十三になった。
去年お母様がお国からお出でになった。
今年の初に、今まで学んでいた独逸語を廃めて、東京英語学校にはいった。これは文部省の学制が代わったのと、僕が哲学を遣りたいというので、お父様にねだった為である。東京へ出てから少しの間独逸語を遣ったのを無駄骨を折ったように思ったが、後になってから大分役に立った。>
すべからくこういうような文体である。十三歳というと、中学一年生だ、私の場合は。お父様、お母様と両親のことをいうのである。育ちがよい。何はともあれこの本は面白い。もっと早く読みたかった。
(今日は、ここまで)
気になる本を書いておく。
(1)『一億三千万人のための「歎異抄」』(高橋源一郎、朝日新書、891円)
<他力本願ってなんだ。地獄とはどこだ。ふるえるほどわかる。戦乱と天災の中世に生まれた『歎異抄』が、」みずみずしい「ぼくたちのことば」で蘇る。>
この本を読んでみたい。
(2)『死を生きる―訪問診療医がみた709人の生老病死』(小堀鴎一郎、朝日新聞出版、2420円)
<介護の現実、在宅死と病院死、命を終えるための医療・・・。普通の人びとの死が、死と向き合う勇気を与えてくれる。>
小堀さんは森鴎外の孫なのだ。数年前に小堀さんの講演を拝聴したことがあった。どこできいたのだろうか?医学ジャーナリスト協会の講演会かもしれない。