TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

私の「医人」たちの肖像 ー〔123〕 ボツリヌス菌の臨床応用と梶龍兒さん 〜1995年

(123)私の「医人」たちの肖像―梶龍兒さんとボツリヌス菌の臨床応用〜1995年

 言語療法士の関啓子さんが自らが体現された高次脳機能障害の後遺症治療において、ボツリヌス菌投与にも挑戦されたことを知った。ボツリヌス菌の臨床応用といえば梶龍兒さんを思い出す。当初、ボツリヌス菌の臨床応用はジストニアなどにおける手指の震えなどが対象であったと思う。研究が緒に就いたのが1995~1996年頃であった。当時、私は雑誌「脳と神経」の編集に従事していた。
 ボツリヌス菌の臨床応用に関する論文を「脳と神経」誌に、梶さんのグループが複数回にわたり投稿されてきた。編集委員による厳正な査読を経て採択となり掲載された。これは梶さんが在籍していた京都大学医学部神経内科(木村惇教授)の臨床研究でありアラガンという京都の製薬会社が研究に関係していた。ボツリヌス菌の臨床応用研究における贈収賄汚職が突然新聞報道された。アラガン社からの振り込み金が梶さんの個人口座にあったというのだ。これが「贈収賄」とされ、梶さんが逮捕された。梶さんは臨床家として患者さんから慕われていた。この逮捕の後で「梶先生を早く返してください」という複数の手紙が警察に寄せられたという話を少し後で聞いた。
 ボツリヌス菌の臨床応用研に関する複数の論文が上記の雑誌「脳と神経」に掲載されていたので、新聞社から問い合わせの電話がかかってきた。件の収賄連座して、折しも海外から帰国してきた京都大学医学部神経内科・木村惇教授が空港で逮捕されたとの報道もあった。当然ながら証拠不十分で事件は不起訴となった。その後もボツリヌス菌の臨床応用研究は積み重ねられていった。梶さんのグループから目崎高広さんという少し若手の方からも論文が投稿されてきた。
 この時から数年後に梶さんは徳島大学医学部・初代神経内科教授として異動された。その直後、雑誌「脳と神経」の編集委員の一人に、編集委員会で梶さんが推薦され就任を委嘱した。承諾して就任された梶さんは、多忙のなか四国から東京での雑誌の編集委員会に出席して拝察する。
 上記は私の三十年前の記憶から記述した。記憶は脳の「海馬」に蓄積されているという。記憶のメカニズムはどうなっているのだろう。追って雑誌のバックナンバーや古い手帖を見ながら上記の記憶の真偽と事実経過を検証したい。ボツリヌス菌の臨床応用は今では確立され、「日本ボツリヌス治療学会」が既に10年近く会を重ねているようだ。今回は古い記憶を辿りながら箱根仙石原でボツリヌス菌臨床応用のことを記述した。
(2022.11.16.)

(私の「医人」たちの肖像―〔123〕梶龍兒さんとボツリヌス菌の臨床応用〜1995年)