TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『家族の深淵』(中井久夫)は重い暗い文体の本の印象だ

 『家族の深淵』(中井久夫)を読んでいる。中井さんは、由緒ある家庭で生まれ育った人と知った。本の帯封にこうあった。

 「往診先での医師と家族の在り方を描いた表題作から「きのこの匂いについて」まで。精神科医としても観察と感受と寛容が生んだ38編。毎日出版文化賞受賞作。」 

 この本は著者の2冊目のエッセイ集であるとのことだ。一冊目が「記憶の肖像」(みすず書房、2800円)である。本当はこちらを先に読んだ方が分かりやすいのかもしれない。読み始めてみるとなんと重いそして暗い文体の文章なんだろうかと思う。

 <「執筆依頼が来ると、私はまず、折口信夫が弟子にかねがね「心躍りのしない文章はかくものではないよ」と言っていたことを思いだす・・・・・自分の領域で、しかも今までにない新しい切り口をみせることができるものが私にはいちばんいい。20パーセントぐらい冒険的要素があっても、つまり未知の領域に乗り出す冒険があってもいい」。3年前、エッセイ集『記憶の肖像』を世に送った著者は、その後も、精神家医としての日々のなかで、さまざまなスタイルの文章をい紡ぎつづけてきた。専門である分裂病を論じても、ギリシャ文学について書いても、戦後を生きた日々や友人の思い出、そして阪神大震災の渦中の神戸の様子やを描く時にも、そこには鋭い観察眼と稀なる感受と寛容が織り合わさって、無比の文体が構築される。その文章を一書にまとめた。
 医師として往診先の家庭に赴くときの心づもりや現場の模様をたんたんと綴った表題作「家族の深淵」、かつて下宿していた韓国夫人の思い出を主奏に、ウイルス学から精神科に転身する当時の自分と周辺の姿、さらに祖父の生き方を重ね書きした「Y夫人のこと」をはじめ、分裂病や老い、ハンガリーへの旅、ギリシャ詩について、独自の文化論でもある「きのこの匂いについて」、原稿依頼から完成までの書き手の身心の変容を細部までユーモラスに描いた「執筆過程の生理学」まで、38編、冷戦時代とともに生き、神戸に住まい神戸を愛する著者のみごとなオブジェである。>

 この本のカバー表紙(表4)の解説を全て引用した。誰がこの文章を書いたんだろう。見事に全貌を紹介している。読まないうちに内容の予測がつくほどである。中井さんは昨年の8月に亡くなった。誰が追悼文をかいているのだろうか?神戸なんだから、内田樹さんや感染症専門医師の亀田健太郎さんとは接点がなかったのだろうか。ともあれこの本を読んでみよう。既にこの後の第3エッセイ集「時のしずく」は昨年読んでいる。

 これまで読んだところは以下だ。

・家族の深淵 往診で垣間見たもの
・Y夫人のこと
 韓国出身のY夫人のこともさることながら、中井さん祖父の影響を大きく受けていることが書いてあった。日中戦争の時代を経て日本の知識人がどのようにして生きて来たかがわかる。中井さんはすぐれた士族、「親ガチャ」に恵まれたひとだった。
・二つの官邸へ
 フィリピンのマラカニャン宮殿及び日本国首相官邸へ招かれたことが書いてある。いずれも稀有な体験なのだが、固有名詞を書いていないので素人の私にはわかりにくい。マルコスとかフィリピンとのことはともかく、首相官邸にどういうひとが招かれたのかを、実名はプライバシー保護から書けないのだろうか。安倍首相のときに「桜を見る会」でゴタゴタがあった。あれはなんだったのか。首相官邸にどういう人が招かれたのか実名が出てもいいと思うのだが。
 (読書感想は今日はここまで)

義と歓待の精神、理想のケア 精神科医 中井久夫を悼む 寄稿・斎藤環
 昨年(2022年)8月に中井久夫をさんが亡くなられた。きっと、雑誌や新聞で追悼文がたと思う。医学界新聞には載っていなかったのだろうか。「こんなとき私はこうしてきた」(医学書院の「ケアをひらく」 シリーズにあったのだろうか?)
 調べたら標記の追悼文を見つけた、以下に引用しておきたい。

中井久夫先生が亡くなられた。私は著書を通じて私淑してきた一ファンに過ぎないが、中井先生を唯一の師として敬慕してきた。先生が残された業績は、一人の精神科医の手になることが信じられないほど膨大である。臨床の技法としての「風景構成法」の導入、「寛解過程論」をはじめとする統合失調症の研究、
(2022年9月7日、朝日新聞、有料記事で、以下が読めない、後日探す)>

現代思想2022年12月臨時増刊号総特集=中井久夫
 精神科医中井久夫の広大な足跡をたどる。長きにわたり戦後日本の精神科医療の最前線にたち続け、阪神・淡路大震災のこころのケアに尽力するとともに、エッセイの名手にして詩の翻訳家としても知られぬ中井久夫。体系性を拒みつつも尽きせぬ豊饒な多面性に開かれたその世界を一望する、追悼特集。なんだって。

こんなとき私はどうしてきたかー希望を失わない力(中井久夫医学書院)■
 「ケアをひらく」シリーズにあったのだ。もう一冊くらいあったかもしれない。編集者の白石さんが中井先生を掴んでいた。医学界新聞でも何回か取り上げていたかもしれない。読んでみよう。図書館に無ければ買おう。