TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

100分de名著『戦争と平和』を読む ~川端香男里さんの解説を読む

 猛暑の日。昼に孫のJ君がやってきた。天井のファン他を掃除するためにアルバイトを兼ねて招いたのだった。
 トルストイの『戦争と平和』第三巻を読んだ。主人公の一人「ピエール」について検索していたらNHKラジオ「100分de名著」の一つ「名著23」で『戦争と平和』について川端香男里先生が出ていた。伊集院光さんの例の番組だ。この放送は聞いた事がないが神谷美恵子さんの「生きがいにつぃいて」を取り上げていたのを読んでよい本だと思った。川端さんの解説も読んでみると、この大河小説の流れがよく分る。邪道であるが長い引用をしながら『戦争と平和』の流れを復習しておきたい。

<「戦争と平和」ゲスト講師 川端香男里

 ロシアがヨーロッパの大国として成長していった十八世紀は別名フランス世紀とも言われ、フランス語フランス文化がヨーロッパを支配していた時代でした。ロシアでも貴族や金持ちたしは幼い時からフランス語漬けで、日常会話はもちろん手紙もフランス語でした。貴族の間では名前をフランス風に呼ぶというのが一般的でした。『戦争と平和』の主人公の一人は一貫して「ピエール」というフランス語名で呼ばれます。(「ピエール」はロシア語では「ピョートル」であり、それはキリストの弟子の一人の「ペテロ」に由来するのである。)この長編小説の登場人物はなんと五百五十九人になりますがストーリーは四つの貴族(ボルコンスキイ家、ロストフ家、べスーホフ家、クラーギン家)の家庭を中心に繰り広げられます。この四家族のうちで最も品のない家族として描かれるクラーギン家では子供が全員フランス語名です(イッポリート、アナトール、エレーヌ)。

 まず物語の時代背景は、貴族たちが祖国のように思っているフランスから、フランス革命の遺産を引き継いだ英雄ナポレオンが攻めて来る。しかも若者のあいだにはナポレオン崇拝が高まってくるーーという状況です。フランスかぶれのロシア人たちが時代の追い風を一身に集めた英雄ナポレオンに抗して戦うことを余儀なくされ、フランスべったりのロシアの歪みからの脱却を迫られることになるのです。


 (うえのような解説を読むと時代背景がよくわかる。主人公の一人、アンドレイは最初の従軍において負傷してフランスの捕虜になるのだが、暫くして傷がなおって帰国して故里にもとできて、ロストフ家の末娘ナターシャと婚約(事実上)したが、父親の結婚は一年待っての言を受け入れて、再び戦場に戻っている。その間にナターシャはクラ―ギン家の穴トーリの誘惑を受けいれ「駆け落ち事件」になる。これも上層貴族社会のできごとなのだった。)

 

 次に、戦争ということを中心に考えると「戦争と平和」には二つの山があります。一八〇五年のアウステリリッツの戦いが前の山で、一八一二年のボロジノ会戦が後の山になります。第一部と第二部がアウステリリッツを中心にして個人生活を軸に展開する小宇宙の世界であるとすれば、第三部と第四部はボロジノを中心として、国家・民族の歴史がかかわる大宇宙の世界です。両方の世界で共通していることは、作中人物がほとんどみな何かを、何かある絶対的なものを追い求めているということです。その代表的な人物がアンドレイです。いかに生きるかとという模索を徹底的行うとという点で、トルストイの分身と言っていいこの主人公に対して、トルストイは辛くあたっています。絶えざる「やり直し」の処分にあい、結婚も失敗(ナターシャとの破局)、戦場に出るたびに負傷し、生死の境めで辛うじて絶対的なものにふれることを許されます。

 『戦争と平和』はそれこそ「超」がつくほどの大作です。それを一〇〇分で味わおうというのですから大変ですが、その作者トルストイは正に巨人の名を与えるのにふさわしい人です。ロシア語には、巨人を表わす言葉がいくつもあります。ギガーンと、ヴェリカーン、ティターン、いずれもトルストイを形容する言葉として愛用されています。その思想・行動の振幅の大きさ、その苦悩の奥深さも巨人的です。長く生き、長く書き、まるで「不死の人」(ゴーリキイ)のように時代を越えて生きた人です。

 (中略)

 最後に見落としてはなrsないことですが、トルストイが独立独歩の態度を貫き得たのは彼が地主貴族であったからです。生活のために闘わなければならなかったドストエフスキーチェーホフとは全く違う世界にいたのです。ゴーゴリに発する「ちっぽけな」貧しい人間を描くという十九世紀ロシア文学の伝統に逆らって、貴族の生活を真正面からとりあげた『戦争と平和』は、実はロシア文学史上希にみる大胆な挑戦だったのです。

 

<コメント>

 このNHKの「一〇〇分de名著」の「戦争と平和は、2013年6月5日(水)~7月3日(水)まで5回にわたって放送さsれたらしい。杉本哲太さんが「戦争と平和」を朗読してから、伊集院光さんともう一人の女性がモデレータで。川端香男里さんが講師として解説している。面白い晩組みであった。聞いてみたかった。