八ヶ岳の三日目は初めて雨が止んだ。朝食の後10時から11時過ぎまでグリーンヒルの周囲を少しだけ歩いてきた。二泊し三泊目洋室に移るので一度清算した。それで、ランチ過ぎの14時頃まで部屋に入れない。戻ってから玄関寄りの待合室の書棚で本を探してみた。『重力の都』(中上健次、1988、新潮社)を借りてきた。少し読んだ。この本は「谷崎潤一郎に捧げる」というものだ。中上健次って、随分昔に昔読んだことがある。
<谷崎潤一郎に『春琴抄』という佳品がある。連作『重力』は大(おお)谷崎の佳品への、心からの和讃と想って頂きたい。>
と、「あとがき」に書いてあった。この天才肌の作家は46歳という若さで去っていった。先日、丸谷才一の『思考のレッスン』を読んでいた時に「文章の達人」として谷崎の『細雪』をあげていたのを思い出した。中上は、谷崎の『春琴抄』に何を読み込んでいたのであろう。『春琴抄』は読んだことがある。たしか、盲目の「春琴」という少女を愛する年上の男の話であったと思う。耽美主義というものであったろうか。『重力の都』(中上健次,1988、新潮社)は短編連作六編をまとめた本だ。『愛獣』と『重力の都』の二編を読んでみた。「なんだい?これは」という感想である。
ここまで(続く)