TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

私の「医人」たちの肖像―(66)Gazzaniga vs. 杉下守弘さん:インタビュー「脳研究の新局面―右半球に言語機能があるか」~1987年9月11日(金)

(66)Gazzaniga vs. 杉下守弘さん:インタビュー「脳研究の新局面―右半球に言語機能があるか」~1987年9月11日(金)

「ガザニガが、また日本に来るからインタビューをしようか?」
 杉下守弘さん(東京都神経科学総合研究所)から、私の前任者のSH君に、インタビュー企画が持ち込まれた。
ガザニガ教授へインタビュー■
●1987年9月11日:
 
1987年9月11日(金)。第12回日本神経心理学会が、四谷の上智大学講堂で開かれた。午後13時20分から、分離脳研究で著名な米国のコーネル大学ガザニガ教授の講演を取材した。ガザニガ教授の講演の後、午後15時から15時40分くらいまで、上智大学の食堂の片隅で、インタビューをした。インタビューの場所も時間も限られていたのだ。
 「Michael S. Gazzaniga (コーネル大学・神経学部)教授に聞く―脳研究の新局面:右半球に言語機能があるか?」のタイトルで、インタビュー記録を、翌年の医学界新聞・第1783号(1988年2月1日付)に掲載した。
 この時より6年前の1981年9月、京都で開催された「第12回世界神経学会」の折に、ガザニガ教授と杉下さんの対談「人間の右脳と左脳―その機能と局在と統合」を既に行っていた。これは前任のSH君の取材記事だ。したがって、ガザニガさんの医学界新聞への登場は二回目であった。
 以下に、その概要を紹介する。
■脳研究の新局面―右半球に言語機能があるか■
 「
人間の大脳半球の分化、そして機能局在に関する知見は、近年の脳梁切断による分離脳研究によってもたらされた大きな成果であった。それによれば、左半球は言語や行為について優位で、右半球は非言語的、直感的、統合的であるという。しかし最近、それら大脳の左右半球の優位性について、新たな見直しも提唱されている。」
 以上のイントロに次いで次のようなテーマでまとめた。
(1)見直される大脳右半球の機能、
(2)MRI神経心理学への大きなインパクト―脳のトポグラフィーが可能に、
(3)脳の「モジュール」とは何か―「社会的脳」としての「脳」
■『社会的脳―心のネットワークの発見』
 
ガザニガ教授は、その頃、“The Social Brain-Discovering the Networks of the Mind”(日本語版『社会的脳―心のネットワークの発見』青土社刊、1987年12月15日)を刊行し「脳のモジュール説」を提唱していた。この本の日本語訳は、関啓子・杉下守弘の両名である。本書の印刷は、1987年11月25日となっている。ということは、ガザニガさんと杉下守弘さんの対談を上智大学で行った、1987年9月11日には、翻訳は既に完成し最期の校正段階に入っていた頃と推察される。果せるかな「訳者あとがき」で次のような記述を見つけた。
 「本書は神経心理学者として著名なガザニガ博士が若くして悲劇的な死をむかえたジョセフ・ホルツマン博士に捧げたものである。その内容は脳と心の問題を理解しやすい形で、しかも、先端の研究成果と思索を織りなした出色の著作である。・・・・・(中略)ガザニガ博士が本年九月に来日された際に本書はホルツマン博士をいたんで、全霊をつくしたと言われていた。」
 また、次のような記述も、「訳者あとがき」にあった。
「本書でガザニガ博士は分離脳患者の研究から脳のモジュール説を提唱している。モジュールとは情報を処理し、考えや行動をおこすことができるかなり独立した機能単位であり、脳は多数のモジュールからできているという説である。ガザニガ博士によれば、脳は一つの昨日単位からなりたっているのではない、というのである。脳は多数のモジュールの複合体という意味で社会的脳ということができる。これが本書のタイトルとなっている。」
(2019.4.6)
(私の「医人」たちの肖像―〔65〕Gazzaniga vs.杉下守弘さん:インタビュー「脳研究の新局面―右半球に言語機能があるか」~1987年9月11日