『穆如清風』(中田力著)を読み進めている。難しいが面白い。
第7章 ピカソの相対性理論
「脳は複雑系の代表格である」が冒頭の文章だ。「民主主義の成立条件」のところにこう書いてある。
<民主主義とは、社会全体としての妥協点、いわば、社会全体としての平均的な視点を決める作業である。従って、民主主義が適切に働くためには、集団に属する人々の意見に多様性があることと、多様な主観的意見が同等にぶつかりあう場が存在することが絶対的な条件となる。>
さらに、こう続く。
<考えてみると、これはまさに、複雑系における自己形成の成立条件と同義である。>
ここまで読んで「複雑系」をキーワードとして記憶する。
第8章 医療の原点
第9章 洪範九疇(こうはんきゅうちゅう)
第11章 心の誕生
第12章 神の杖
第13章 最高の友達
第14章 北極星と桑の木
第15章 原点の民
<コメント>
中田力さんの『穆如清風』を読了した。博覧強記の知識に裏付けられた本である。参考文献は挙げられていないが、中田さんは数学・物理学だけでなく哲学・歴史学の書物も読みこなしている。中国古典も読んでいる。それらの知識と経験に裏打ちされて日本の医学と医療をみている。この本の初出はは日本医事新報の連載(2009年7月~2010年10月)とのことだ。文体は紀伊国屋書店からでた「いち・たす・いち」(2001年)、「脳の方程式 ぷらす・あるふぁ」(2002年)の続編である。もうひとつ「脳のなかの水分子ー意識が創られるとき」(2006年)も含めてもいいのかも。中田さんは、初出の媒体が「日本医事新報」という開業医向けの雑誌であったためもあるのか、臨床医向けに書くんだという意識を持っている。タイトルも「フィロソフィア・メディカー複雑科学入門」というものだ。英語で言えば「メディカル・フィロソフィ」、つまり医学哲学ってことなんだろう。
<自然の偉大さとすべての命の尊さを思う時、与えられた環境の中、医療人としての自分がなさなければならないことは、自ずと見えてくるものなのだろう>と、随分と控えめに中田さんはこの本を結んでいる。実は中田さん自身が「自分こそ臨床医なんだ」という自負を持っていたんだと思う。2001年にインタビュー(対談)に参加した時に、中田さんが私はアメリカで18年間あらゆる臨床に携わっていたと強調していたのを思い出した。そこで『アメリカ臨床医物語ージャングル病院での18年間』を楽天ブックスに注文した。ポイントも利用して571円だった。
(続く)