TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『穆如清風ー複雑系と医療の原点』(中田力)を読み始めたので書く

 この刺激的で魅力あるタイトル「フィロソフィア・メディカーー複雑系科学入門」が、日本医事新報に2009年7月~2010年10月まで連載されていたことを不覚にも私は見逃していた。2009年というと現場を退職したのが2011年1月だから、まさに私の職業生活の最後の多忙な時期だったのだ。あの頃に読んでいればまた違った見方ができたかもしれないのに・・・。
 <現場の臨床医は複雑系が何であるかを十分理解している。ただ、自分たちが扱っているものが複雑系であるという実感を持っていない。自分たちが知らず知らずのうちに習得していたものが、人間の叡智が辿り着いた究極の科学であるということを知ることは、それなりに意義のあるものだと思った。>
 上のように、「はじめに」に書いてあった。のっけから、実は、「複雑系」というキーワードを聞いたことはあるが理解していない。

複雑系って何だ

複雑系(ふくざつけい)、英語では、complex systemとは、相互に連関する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質(あるいはそういった性質から導かれる振る舞い)を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなものをいう。』
 上の説明は、ウキペディアによるが、読んでも何だかわからない。まあ、わからないままに進もう。物事には、原因と結果が直線にでるのhはなくて、揺らぎとか遊びとかがあるという理解でいいのかもしれない。

第1章 ローレンツの蝶々
 この「ローレンツの蝶々」については、既に、中田さんの「いち・たす。いち」に出ていた。

 MITの気象学者エドワード・ローレンツ(行動学のローレンツではない)は、初期条件におけるほんの微かな違いが、驚くほど地学結果をもたらすことを発見した。ローレンツの発見から、「蝶々効果(butterfly effect)」という言葉生まれた。
 2021年のノーベル物理学賞は、複雑系物理学分野における画期的な貢献に対して、日本人(アメリカ国籍)の真鍋淑郎博士とドイツ人でマックス・プランク研究所の所長だったクラウス・ハッセルマン博士とイタリア人でローマのラ・サピエンツァ大学教授のジョルジュ・パリ―ジ博士の三人に与えられた。
 上の複雑系物理学のノーベル賞受賞の研究は、ローレンツローレンツの「蝶々効果」の延長ではにのだろうか?

複雑系としての医学■
 
複雑系についての、ウキペディアの説明は抽象的過ぎて分かりにくい。中田さんの本にはこう書いてあった。

<自分たちが対象として眺めているものの群を「系(system)」と呼ぶ。あまりにも多くの因子がお互いに影響を与えながら系全体の行動に作用することで、ひとつ一つは決定論的な操作であるにもかかわらず、系全体としては、予測のつかない、一見、混沌とした状態に見える行動を起こす系を「複雑系(complex system)」と呼ぶ。>

 中田さんの説明のほうが分かりやすい。具体的なのでわかるのっだ。

<30歳の患者にとって禁煙の勧めは絶対的に正しい医療い行為であるが、80歳の患者に対しては正しいとは言い切れない。喫煙が肺がんの主たる原因であることははっきりと証明されているにもかかわず、長年のヘビースモーカーの中には肺がんを誘発しない人もいる。このような、1+1が2にならない状況を「非線形(non-linearity)」と呼ぶが、生体の行動は明らかに非線形である。>

 中田さんの本「いち・たす・いち」は、医学が非線形であることを書いているんんだ知った。さらに、中田さんは、次のように論を進める。

民主主義と複雑系
 「自然科学における概念は、一般社会においても応用が効く。複雑系科学はその代表である。民主主義が進めば進むほど、その国の状態は複雑系の行動を示すことになる。・・・・蝶々効果は、不必要なパラメーターのちょっとした操作が、国の存在すら脅かしかねない重篤な結果を招き得ることを教えている。」

 中田さんの「この本」を読むと目から鱗が落ちる思いがする。文科とか理科系とか分類の仕方に意味がないことが分かる。医学は哲学であり文学でもあり複雑系の最たるものであると知る。

▶ 第2章 クラウジウスの予言 

 ここまでよんできたら、この本は雑誌の連載であったので、2001年に出された「いち・たす・いち」を踏まえて書かれたものと分かった。そこで、ここで中断して、2002年に書かれた、続編としての『脳の方程式 プラス・アルファ』を先に読むことにする。

(後に継続する)