二泊三日の北杜市の旅に二冊の本を持参した。
往路に『村上昭夫詩集』(現代詩文庫)を読んだ。
滞在中日には、『船を編む』(三浦しをん)を途中まで読んだ。
そして、帰路には「知識人」になる夢(『「新しい人」の方へ』 大江健三郎)を読んだ。引用しながら感想を書きたい。この本は、最初、先般100年以上続いた刊行をやめた「週刊朝日」に連載されていた(2003年1月〜3月)ものだと知った。読みやすくどちらかというと若い読者(高校生)向けのように書かれている。
<(「知識人」とは)これまでの人生で勉強したこと、経験しこと、いま自分の生き方に責任がとれる人。それは、自分に、また家族に、そして友人たちに、さらに社会に対して、責任がとれるということです。そして、ひとりでしっかり立っていることもできるけれど、周囲のひとたちと一緒にやってゆく気持ちを持っている人。
さらに、いま現在の自分の生きている社会の、あまり遠くでない未来について、自分としての見通しを持っている人。持てなければ、それを悲しんでいる人。
具体的に、どんな人? といわれるとしたら、たとえば日本の小説家として、夏目漱石をあげたいと思います。>
流石、大江さんは素晴らしいことを言うんだ。私などはとても「知識人」とはいえない。読み進めていくと、大江さんが東大を現役では不合格になり一年の浪人生活をやったと知った。驚いた。そして、次のような件も読んだ。
<あの二度目の受験のための一年間をのぞけば」、私が十三、四歳のころからもう五十年以上も決して安まなかったことで、そういえば「知識人」になるための練習としてこれをやってきた、と思うものがあります。母親にもいたことですが、生活の基本に、本を読むことを置く態度です。>
あの大江さんにしてこんなに謙虚な読書人であった。そして、『ドン・キホーテ』を(滑稽にひびくかもしれませんが、と言っているのだが)永年、愛読してきたんだという。『ドン・キホーテ』は、ドストエフスキーのそして小島信夫さんの愛読書でもあった。
私がいまから「知識人」になりたいというのも成れるかもというのも畏れ多いことであるが、読書によって残りの生きる日々を豊かにできるのではないかとの確信が持てた。
さて、今日の気になる本を書いておきたい。
朝日新聞朝刊(2023年7月12日付)の広告から。
『考えるナメクジー人間をしのぐ驚異の脳機能』(松尾亮太、さくら舎、1650円)
<ナメクジは脳も生態もすごいんです!論理思考も学習もでき、壊れっると勝手に再生する。1.5ミリ角の脳の力!ナメクジの苦悩する姿にビックリ!』
このキャッチ―は大げさではないかな?「脳」が本当にあるのだろうか?単純だから勝手に再生できる。「苦悩する」ナメクジってありえるのか?この本を見てみたい。