小島信夫さんの小説は『抱擁家族』くらいしか読んだことはない。いま読んでいる『私の作家遍歴』は雑誌「潮」に連載されたものを単行本(三冊)にまとめたものだ。初めはたしか小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)から始まったんだが、途中からセルバンテスの『ドン・キホーテ』になり、そのあとはロシア文学に移って来た。小島さんはロシア文学が大好きだったと知った。今回は以下の項目を読んだ。
三人の画家
私のことを分かってくれ
誘惑する才能
以上を読みながら概要を紹介したい。
まず、「三人のが画家」はこうだ。三人の画家は、フェルメール、ファン・アイク、そしてべラスケスだろうか。
<ベラスケスとフェルメールとは同じ時期にヨーロッパの南(スペイン)と北(オランダ)にいた。>
「私のことを分かってくれ」はドストエフスキーの『貧しき人々」の主人公ジェーヴシキンのことを語っている。
<ドン・キホーテは自分の伝記があまりにも早く出回り,ニセ物さえ現れたというのに、伝記の正確さを心配してあとは心平穏に昼寝を楽しんんだ。・・・ジェーヴシキンは、『外套』という自分の伝記を読んで転落した。>
ゴーゴリの『外套』の主人公はアカーキ・アカーキビッチであるが、ドストエスエフスキーの『貧しき人々』の主人公ジェーヴシキンは、自分はアカーキ・アカーキビッチそのものだと思っていたのだろうか。そういえば、ドストエフスキーは「われわれはゴーゴリの『外套』からでてきた」と言っていたと、読んだことがある。
「誘惑する才能」は『赤と黒』を書いた」スタンダールのことに言及している。
<スタンダールは、女の壁を破ろうとして40年間も費やし、いくつかの原則や必然的帰結を元に、一つの戦略体形を、まとめあげている。・・・・スタンダールは、どの女性からもほんとうに愛されたことはなかった。>
『赤と黒』は、若い頃に読んだことがあるはずだが覚えていない。ジュリアン・ソレルとかいう若い主人公の名前は憶えている。もう一度読むことはないだろう。
(今日はここまで)
とにもかくにも、この本は小島信夫さんが、楽しみながら書いているんだということは分かった。書くことは楽しい。