TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

「私のC型肝炎物語」 第7 章: マヴィレット治療への挑戦―(44)PEGインターフェロン再考

(44) PEGインターフェロン再考

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続いている。2020年の夏は本来なら爽やかな緑のなかで東京オリンピックの開催に向けて世の中は明るく輝いていたはずだった。ところが世界の風景は一変してしまった。地球全体が新型コロナウイルスという見えない蔭との闘いの中にある。

■サイトカインストームって何?■

新型コロナウイルス感染によりヒトの免疫系は乱れてサイトカインストーム(免疫暴走)という状態になっていくこと報じられている。「サイトカイン」というキーワードに接して、C型肝炎治療として私が体験したPEGインターフェロンについて、古い資料を再考することにした。

■PEG-インターフェロン再考■

2016年頃からC型肝炎ウイルスの治療はインターフェロンフリーの即ちインターフェロンを使わない飲み薬の時代になったことは既にこのシリーズブログで詳細に紹介してきた。インターフェロンフリー治療方法とは、直接作用型抗ウイルス剤(DAAs:Direct Acting Antivirus)と呼ばれる経口薬のことである。

それではインターフェロンは用済みの過去の薬になってしまったのだろうか?この機会にインターネットで調べてみた。

以下は、日経メディカル「処方薬事典」からの概要のまとめである。

インターフェロン製剤■

肝炎などの治療薬として使われる。

IFNは体内でウイルスなどの病原体や腫瘍細胞などの異物に対して産生されるサイトカインと呼ばれるタンパク質の一つである。名称はウイルスを抑制する因子として発見された経緯からウイルス干渉因子(Interference Factor)としてInterferon(IFN)と呼ばれるようになった。IFNには幾つかの種類、IFN-α、β、γなどがある。IFN-αとIFN-βは類似した構造をもっており、抗ウイルス作用、細胞増殖や免疫応答の調節、細胞の分化誘導などの作用をあらわす。

■一般的な商品とその特徴■

ペガシス: ペグインターフェロン-α-2a製剤は、B型肝炎(B型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善)、C型肝炎へ保険承認されている。

ペグイントロン: ペグインターフェロン-α-2b製剤は、C型肝炎悪性黒色腫における術後化学療法へ保険承認されている。

ペグインターフェロン製剤は、現在も現役の薬として使用されているのである。ただし、C型肝炎治療においては現在、インターフェロンを使わない「インターフェロンフリー」の治療が中心となっているとの「但し書き」も記述されていた。2006年に私が注射したのはペグイントロン製剤であった。

■PEG-IF治療における説明と同意■

ペグインターフェロン(PEG-IFN)治療に際して、3つの説明と同意文書に署名捺印をした。当時のフィルにその折の文書が保存してあった。以下、その概要を記録したい。
 (1) C型慢性肝炎に対するペグインターフェロンα-2b(ペグイントロンおよびリバビリンレベトール)併用投与に関する説明文書:

この文書は、1)はじめに、2)入院の必要性について、3)肝生検の必要性について、4)ペグインターフェロンおよびリバビリンの投与スケジュール、5)ペグインターフェロンおよびリバビリンの投与によって得られる効果について、6)ペグインターフェロンおよびリバビリンの副作用について、7)ペグインターフェロンおよびリバビリンの投与を受けない場合の他の治療方法について、8)投与中の注意すべき点について、9)投与終了後の注意点、の9項目について詳細に記載されていた。

この文書に基づいて、濱田医師の同席のもとで後藤医師から説明を受けた。説明の後で、東京大学医学附属病院長殿宛の「同意書」に署名をした。投与スケジュールの項目に、「入院翌日あるいは翌々日に肝生検を施行し、特に合併症の問題が生じなければ生検の翌日から投与を開始します。開始にあたっては、直前の採血で、白血数が1500/㎜3以上、ヘモグロビン10ℊ/dL以上であることが必要です。」と記述されていた。さらに、第1回、第2回投与以降も、途中で採血して、副作用(好中球、血小板、ヘモグロビン値の低下等)をみて、それが顕著であれば添付文書の規定に沿って減量するなどが明示されていた。

いま読んでみても詳細で厳密な文書である。ペグインターフェロンおよびリバビリン併用療法が厳しい治療であることがよくわかる。私の場合は、途中で断念を余儀なくされたことは既に触れた。

私の合気道の友人Yさんは、聖マリアンナ医大で主治医であった飯野四郎医師(消化器内科教授)の奨めで、ペグインターフェロンおよびリバビリン療法の治験に参加して、C型肝炎ウイルの排除に成功した。この治験がいかに苦しいものであったかを、彼は時折いまでも語る。1990年代の末頃のことらしい。

(2) 経皮的肝生検の説明文書:

 この文書は、1)肝生検の目的、2)肝生検の方法、3)検査の際の注意事項、 4)肝生検の危険性について、5)その他、の5項目からなる。「肝生検の方法」の項目に次のようにある。

「肝生検は、1.3㎜の太さの針を超音波で見ながら肝臓の表面に刺入し、長さ1.5㎝の糸状の肝組織を採取する検査です。」

このような説明を読むと厳しい検査だとよくわかる。この時は、ベッド上で局所麻酔なので意識はあるから「俎板の鯉」状態であったのを覚えている。

(3) 遺伝病における原因遺伝子解析研究への同意文書:

上述した2つの同意文書の他に、「患者さんへ」(平成15年6月27日改訂)という文書があった。これは、「遺伝子解析に関する研究協力への同意に関わる幾つかの重要な点を説明いたします」というものだった。中身は、1)遺伝子とは、2)遺伝子と病気、3)遺伝病における原因遺伝子解析研究の特徴、4)遺伝子解析研究への協力について、の項目に沿って説明がされていた。

この文書には、「同意の表明の前提」の文書が添付されており、「研究協力の任意性と撤回の自由」という項目があり、一旦同意しても不利益を受けることなく撤回もできますと明示されていた。研究計画と研究目的、研究機関は以下のようだ。

研究題目】肝臓病における炎症・線維化・発癌に関与する遺伝子の探索に関する研究。

研究機関および研究責任者】この研究が行われる研究機関と責任者は以下の通りです。研究機関:東京大学附属病院消化器内科、研究機関責任者:東京大学医学部付属病院消化器内科 教授 小俣政男、共同研究機関:ヒュービッドジェノミックス株式会社、研究責任者:東京大学医学部附属病院消化器内科 助手 加藤直也

当時、医学・医療関係の会社の社員であった私はこの文書に直ちに署名した記憶がある。「治験でも、遺伝子研究でもなんでも参加しよう」という意識が強かった。

ペグインターフェロン治療に挑戦して失敗した2006年から、2017年10月に東京都・町田市の「肝臓友の会」の講演会でインターフェロンフリーの最新治療薬マヴィレットについて知るまでに紆余曲折の11年の月日が経過していた。この時の講演者の加藤直也教授(千葉大学・消化器内科)こそが、2006年に東京大学医学部付属病院消化会内科で「ペグインターフェロン治療」を受けたおりに採血資料を提供した「肝臓病における炎症・線維化・発癌に関与する遺伝子の探索に関する研究」の研究責任者であった。小俣政男教授は千葉大学医学部出身であり、若き日の加藤直也さんは千葉大から小俣政男教授の元で肝臓専門医の道を歩みだした初期のころだったのかもしれない。奇しくもというか偶然の巡りあわせに今まで気がつかなかった。

(2020.6.29)

(「私のⅭ型肝炎物語」 第7章: マヴィレット治療への挑戦―〔44〕 ペグインターフェロン再考)