TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

今年(2020年)のノーベル医学生理学賞はC型肝炎ウイルスの発見に

 

今年(2020年)のノーベル医学生理学賞C型肝炎ウイルスの発見に

 

  今年のノーベル医学生理学賞が「C型肝炎ウイルス」の発見者に決まったと、10月5日、スウエーデンのカロリンスカ医科大学から発表された。C型肝炎ウイルスHCV)の発見は、1989年のことだから31年後の受賞となる。既にノーベル賞に輝いているとばかり思っていた。エイズウイルス発見に対する授賞は2008年だから、C型肝炎ウイルス発見の方がHIVより評価が遅れたのだ。  私のブログ「私のC型ウイルス肝炎物語」では、非A非B型肝炎ウイルスがC型肝炎ウイルスとして再発見された頃のことに触れてきた。この機会に記憶と記録のため今年のノーベル医学生理学賞についてまとめておきたい。

 受賞に輝いたのは、米国のハーベイ・オルター(米国立保健研究所)、マイケル・ホートン(カナダのアルバータ大学教授)、チャールズ・ライス(米国のロックフェラー大学教授)の3氏である。オルター氏は輸血後に肝炎になった患者を研究し、新たなウイルスの存在をつきとめた。ホートン氏は1989年、感染させたチンパンジーの血液からウイルスの遺伝物質を特定し「C型肝炎ウイルス」と命名した。ライス氏は、このウイルスに感染した血液の輸血で肝炎が起きると証明した。  ノーベル財団は、「世界の多くの地域で輸血による肝炎が実質的になくなり、世界の健康が大きく改善された。抗ウイルス薬の開発が急速に進み、C型肝炎を完治させることが可能になった」と評価した。国立がんセンター(当時)の下遠野邦忠氏らが日本人に多いタイプのウイルスの遺伝子についてほぼ全容を解明するなど、日本人研究者の貢献もあったと評価した。1990年年代に癌関連の学会で、下遠野さんの発表は何回も拝聴したことがあった。  世界保健機構(WHO)によると、世界では現在、推定7100万人がC型肝炎ウイルスに感染している。2016年には約40万人が死亡したとのことだ。日本国内のC型肝炎患者は推計約150万人と、世界でもとくに多い。年間約2万6千人が肝臓がんで亡くなり、その3分の2以上がC型肝炎に原因があるとみられている。  今年の授賞式は、12月10日にオンラインで行われる。賞金は1000万スウェーデンクローネ(約1億2千万円)。 (以上は、朝日新聞朝刊 2020年10月6日付より概要を引用してまとめた。)

 ■受賞者の概要

  ● ハーベイ・オルター(Harvery J. Alter)

 1935年9月12日、米国ニューヨーク生まれ。ロチェスター大学医学部を経て、1961年から米国国立衛生研究所(NIH)に勤務。その後、ワシントン大学ジョージタウン大学に勤務して、1969年に再びNIHに復帰した。オルター氏は、非A非B型肝炎ウイルスの存在を1970年代に実験で指摘した。

 ● マイケル・ホートン(Michael Houghton)

 1950年、英国生まれ。1977年、キングス・カレッジ・ロンドンで博士号を取得した。2010年からカナダのアルバータ大に移る。現在は同大教授。 1989年にホートン氏が、新たな肝炎ウイルスの遺伝子の断片の特定に成功した。その頃、ホートン氏はカイロン社の研究者だったのだ。カイロン社は、2006年にノバルティスに買収されて存在しない。

 ●チャールズ・ライス(Charles Rice)

 1952年、米国生まれ。カリフォルニア工科大学生化学の博士号を取得。ウイルスの増殖機構の研究に取り組む。2001年からロックフェラー大学の教授。ライス氏は、ウイルスが単独で肝炎を引き起こすことを実験的に証明した。検査法が確立して、抗ウイルス薬の開発が可能になった。

 C型肝炎は、インターフェロンを用いない飲み薬の相次ぐ開発(2014年頃から)で、今では治癒可能な疾患となった。その意味でも今回のノーベル医学生理学賞の授賞は遅いくらいと思う。C型肝炎ウイルの発見は1989年で、米国のカイロン社の研究者の仕事だと記憶している。その頃、受賞者の一人ホートン氏はカイロン社に勤務していた。

 (2020.10.6)