TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『日本文学盛衰史』(高橋源一郎さん)を読み終えた

 『日本文学盛衰史』(高橋源一郎さん)をついに読み終えた。高橋さんがフクシマの柳美里さんと対談する予告がSNSで入ってきたが何時かわからなくなってしまった。
 さて、『日本文学盛衰史』には参ったねというのが感想である。面白かった。だが、高橋さん「それはないでよ」という気もする件もある。びっくりしたのは、中程にある「原宿の大患①②③」である。高橋さん自身が胃潰瘍で吐血して死にそうになっている。救急車で運ばれた医院が「長与医院」である。これは、実は夏目漱石胃潰瘍で入院した病院である。どこまでが高橋さんのことで、どこからは夏目漱石のことなのか混乱してしまう。もう一つびっくりしたのは、「歴史其儘と歴史離れ」のところである。高橋さんは何度も結婚している。これを書いている時にお子さんが生まれたらしい。その折に出産のため産院に、父親としてかけつける。そこに森鴎外がやはり奥さんの出産で駆けつけてきて遭遇する。そこでの二人の会話が超面白い。ただ、「これってあり」と思うのは、松田道雄さんの「育児の百科」とスポック博士「育児書」から長い引用をしているのである。この本は、初め雑誌「文藝」に連載されている。引用を沢山すると、連載原稿一回分は足りてしまうのではないかと思うが穿ち過ぎか?

 ともあれ、二葉亭四迷の船上での死から始まったこの長い物語は、明治末期から大正と昭和初期の時代を駆け抜けた近代日本文学の担いたちの生涯を生き生きと紹介してくれる。

 フィナーレを高橋さんは少し急いで導いている。


 「きみがむこうから 歩いてきて
  ぼくが こっちから
  歩いていって
  やあ
  と言ってそのままわかれる
  そんなものか出会いなんて!」
  (辻征夫「きみがむこうから・・・」)

 高橋さんは、素養として詩や短歌への造詣が深いようだ。それが、じつに効果的に使われているように思う。この本に触発されて、漱石の「こころ」、独歩の「武蔵野」、花袋の「蒲団」も「読んでみたい。そう言えば、昨年、大磯に遊んだときに、藤村が晩年を過ごした家が保存してあり訪れたことがある。藤村も読んでみたい。また、相馬黒光の黙移を読めば別の視点から明治の藤村、透谷たちに会える。