TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

朝日歌壇を読む

「歌壇」6(2020 June)を稲城図書館で借りてきて少し読んだ。この号では、「塚本邦雄生誕百年没後十五年」という特集を掲載していた。青テントで有名な寺山修二は、1970年代の頃に歌人としても著名で私も知っていた。寺山さんは随分前に早世してしまった。昨年、医師で歌人岡井隆さんが亡くなった。やはり、「短歌」で岡井隆特集をやっていたので読んだ。その追悼号で、永田さんが岡井さんのことを、京都での歌会の後で飲んで二次会で永田邸に泊まって朝まで飲んだことを書いていた。歌人の世界もそれはそれで大変なものだと思った。細胞生物学者の永田さんは、二兎を追った先達として岡井さんに私淑していたんだと感じた。さて、「短歌」の塚本邦雄生誕百年特集は面白い企画だと感じた。「31歳競詠」という特別企画をやっている。若手の歌人に各々作品8首に加え「私にとっての塚本邦雄」というエッセイを書かせているのである。
 「ごらんあれが氷河期をのうのうと生きた哺乳類だよ触ってごらん」
 これは、「疫病と楽園」とタイトルする渋谷美穂さんの8首の一つだ。正直なところ、若い歌人の「前衛短歌」というものが私にはわからない。
 そのほか、この特集では次のような方が書いていた。
(1)前衛短歌が世界を変えた(島内景二)
(2)「前衛以前」に胚胎するもの(江畑實)
(3) 戦争絶無の世界など(森井マスミ)
(4) <美>への苦闘(黒瀬からん)
(5) 悪意・悪戯・悪趣味(バッドティスト)―歌集『魔王』における「悪」の爛熟
(6)巻頭歌にみる塚本邦雄の肉体(石川幸雄)
(7) 失われた青春を求めて(寺井龍哉)
(8) 塚本邦夫雄流詩語錬金詐術秘伝-初期五歌集を俎上にのせてー(柳澤美晴)
(9) 贋金使いの時代(山田富士郎)
(10) 精神に王水の充満を(阪森郁代)
(11) ひとつの典型として(森本 平)
(12) 欣求の心(林 和清)
(13) 半裸のピカソから、穴幼穴兆たる少女へ(尾崎まゆみ)
(14) パリサイ人人に対したイエスのごとく(小林幹也)
(15) 塚本邦雄の「私性」の現代的な意味について(三宅雄介)
(16) 最前列で映写幕(エクラン)を(五十嵐淳雄)
(17) 言葉で描く絵(山田消児)
(18) 塚本と終わらない茂吉(谷川電話)

 あとで、塚本邦雄を読んでみるために特集の中身を記憶と記録のために転記しておいた。この中で、林 和清さんの「欣求の心」から印象に残った件を引いておく。

塚本邦雄の限定本『花にめざめよ』である。一六四首の短歌で構成され、それがすべて二六字ぴったりで、なおかつ十四首一組ソネットの趣向をなし、さらに最初の一字を追って横読みすると十四文字の詩になり、最後の一字を横読みすると脚韻が踏まれている「沓冠」になっているという、驚異の超絶技巧が駆使された一冊であり、おそらく史上最大の「沓冠」群作である、と紹介されている。>
 なんなんだろう、これは短歌と言えど、奥が深いのだと知った。『花にめざめよ』を探して読んでみたい。

 さて、今日も例によって、朝日歌壇から私の秀歌を選んでみたい。
<寿司買って帰りぬワクチン一回目五十パーセントは効いている気がして(アメリカ 大竹幾久子)>
エッセンシャルワーカーの響き明るくて報いられない苦労を隠す(葛城市 林増穂)>⇒ 佐佐木幸綱選:コメント: 佐佐木さんの選から二首を選んだ。アメリカの大竹さんの歌は、歌壇で最初のワクチン接種当事者からの投稿だという。大竹さんはアメリカからの常連の投稿者のようだ。前にも入選していた。葛城市の林さんは、介護施設で働いているのだろう。林さんの歌を読んでいて、先日、どこかで凄い歌に遭遇したのを思い出した。メモもしておけばよかった。忘れてしまったが、「二重三重の手袋を通して感ずるのは糞尿の温かみ」というような意味の歌だった。やはり、介護に携わる人が詠んだものだった。

<子を塾に送り届けるこの車がどこかの氷河を溶かしておりぬ(和泉市 星田美紀)>⇒高野公彦選: コメント: 地球温暖化を自分のこととして、星田さんは捉えている。大企業が排気ガスを出していると責めるのはたやすいが、自分の車もまた排気ガスをだしていると顧みるのはなかなかできないことだ。

<わたしから産まれたような貌をして子猫が眠るわたくしの上(ひたちなか市 猪狩直子)>⇒永田和宏選:コメント: 猪狩さんのうたは面白いけれど、チョットどうでもよいペット歌だと思う。

<三回戦豪州の蝶顔に来てなおみはやさしく空に放てり(薩摩川内市 川野雄一)>⇒馬場あき子選:コメント: テレビで私もこの情景を見た。大坂のみさんは素晴らしいテニスプレイヤーだと思う。人種差別に抗議して堂々と駆動するのが日本人離れしている日本人だと思う。

 <会長の女性蔑視をあげつらう吾を笑いし家内の目線(豊橋市 熊本直弘)>⇒この歌は、高野公彦さんと、馬場あき子さんの共選だ。熊本さん、奥さんから「あなただって男だといって威張ってるんじゃないの」と奥さんから見られたのかな。

 今週の歌は、やはり世相を詠んでいるのがえらばれている。次のような歌もあった。
<マスクして眼鏡に帽子かぶりても齢(よわい)かくせず席ゆづらるる(福岡市 藤掛博子)>⇒高野公彦選: コメント:この歌は、本当に素直に詠んでいる。無理して世相を切らなくても、こういう私的な詠み方もいいのだろう。

 ということで、今週の私の秀歌は、

マスクして眼鏡に帽子かぶりても齢(よわい)かくせず席ゆづらるる(福岡市 藤掛博子)」としたい。

 昨年末から、短歌の雑誌を読んで、自らも作歌を試みたが、歌を詠むのは本当に難しい。チョット自信喪失感もある。上手でなくてもよいから、続けよう。ということで、歌壇の隣の俳壇を見たら、

「根拠なき自信湧きたる朝寝かな(京田辺市 加藤草児)」

 という句が、長谷川櫂さんからトップで選ばれていた。長谷川さんが、「一席。何だか力がみなぎるような気がする。これこそ朝寝の功徳」とコメントしていた。俳句も、うまく切り取れると面白いね。

(更新予定)