TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

『オルフェウス変幻-ヨーロッパ文学にみる変容と変遷』(沓掛良彦さん)の書いた本のこと

 沓掛良彦さん(東京外語大学名誉教授)が面白そうな本を出した。『オルフェウス変幻-ヨーロッパ文学にみる変容と変遷』という本(京都大学学術出版会・5940円)だ。高くて多分読か買わないだろう。興味を持ったので、記憶と記録のために本日のブログに纏めておきたい。出典は、朝日新聞朝刊(2021年3月20日)の「著者に会いたい」という記事だ。実は、沓掛良彦さんのお名前は、むかし北大の露文科の学生のときに、当時北大講師だった中村健之介さんから聞いたことがあった。沓掛さんは、早稲田の露文科をでてから、東大の比較文学(大学院)で、寺田透さんと木村彰一さんに師事した。ということは、沓掛さんと中村さんは寺田透さんに同じ時期に師事していた。

 以下に新聞記事から引用しておく。
<竪琴を弾いて歌う、古代ギリシャの詩人オルフェウス。文学や絵画、音楽、映画などに描かれてきた「原書の詩人」だ。プラトン、ウエルギリウスやオウディウス、ダンテ、リルケ、バレリーらがとらえた姿をたどる。2500年の旅となった。>
 早大の露文化時代はドストエフスキーに熱中したんだという。東大の大学院で比較文学を専攻して、フランス文学や古代ギリシャ詩へと関心が広がる。
<「散文より詩、叙事詩より叙情詩に引かれるのですが、自分ではかけない」と、翻訳に向かった。最初の本は、古代の詩4500編を収めた『ギリシャ詞華集』から、151編を訳した『牧神の葦笛』。37歳のときなんだと言う。>
<詩人サッフォーの評伝、『ホメロースの諸神讃歌』の翻訳も出した。50代からは東洋に回帰し、陶淵明や太田南畝、和泉式部西行らを著書に纏めてきた。>
 ギリシャからどうして、江戸の太田南畝や、さては西行にまで興味が広がるのだろう。70歳代になって、『ギリシャ詞華集』の全訳を依頼される。約2年で完成させ、尊敬する詩人・鷲巣繁男さんに「オルフェイウスについて書いてみませんか」と言われたことを思いだした。>
 鷲巣繁男といえば、今から52年前に大学3年のときに、札幌で鷲巣繁男さんの寓居に中村健之助介さんに連れられて訪れたことがある。その数年後に鷲巣さんは、上京して大宮辺りに転居した。その頃から10年くらいの間に10~20冊くらいの本を出版した。そのほとんどを買い求めたが読んでも殆ど理解ができなかった。今も書棚にある。それはともかく、沓掛さんに戻ろう。
 <「ヨーロッパの詩の恩恵を受けている日本の自分たちも、オルフェウスの末裔です。理解するには根源までさかのぼらないと」と考えた。『ギリシャ、ラテン、英、独、仏、伊、西、露語などの文献を読み、「完全にボケるか倒れる前に」猛スピードで書いたのが、『オルフェウス変幻-ヨーロッパ文学にみる変容と変遷』だ。>
 「超大風呂敷ですが、古代から現代までオルフェウス像の変遷を追った、世界で最初の本だと思います」と沓掛さんは言っている。20歳代から、「骨枯閑人(ここつかんじん)という戯号を使っているんだという。
 沓掛さんて随分変わった人なんだと知った。鷲巣繁男さんも随分変わった人にも思えた。ロシア語からギリシャ、ラテン、教会スラブ語も読め、ギリシャ正教徒だった。世の中にはいろいろな人がいるもんだ。文学の世界は広い。