TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

「私と現代ギリシャ文学」(『家族の深淵』中井久夫)を読み進めている

 医師の中井さんが、なんでギリシャ詩の翻訳をしているのかわからなかった。「私と現代ギリシャ文学」をよんだら、その経緯が書いてあった。まいったね。すごいというか素晴らしい。生半可な文学少年、文学青年の域を超えている。

 <1984年十月、私は、若い同僚の結婚式で祝婚歌を読もうとして、よい詩を求めて私の本棚を探し、エリティスの、エドマンド。・キーリーによる英訳詩集(ペンギン)に出会った。巻頭の「エーゲ海」は、彼が友人の婚礼の際に作った祝婚歌にちがいない。すらすらと日本語になった。私が神戸に住み、多島海に面して、ヨットに乗る機会が多かったからであるが、非常によくイメージが出来た。>

 こういうことで、中井さんはギリシャ詩に引き付けられる。<これが契機であった。私は、突然、現代ギリシャ詩に引きつけられた。・・・・・・カヴァフィスの「野蛮人を待つ」が真っ先に目にとまった。・・・・>

 こんなふうにして、ギリシャの詩に惹かれるひとがいるのだろうか。いないと思う。中井さんにその素養が下地が」あったのいだ。
 <(中井さんは、ギリシャの翻訳にとりかかった。)しかし、現代ギリシャ語は難しい。英訳、独訳、仏訳を入手し、精神科医の推理力を生かして、語学力の不足を補おうとした。また、詩人の詩を考え合わせるようにした。さらに、詩朗読のテープをできるだけ入手して、詩人の声あるいは俳優の朗読を聞くことに努めた。1984年から85年にかけての私は、いささかクレージーであった。・・・・>

 精神科医が、ギリシャの詩をそこまでして読むのか?ほんとうにクレージーだ。

<結局、私は1985年春、小さな私家版現代ギリシ訳詩集を作って知人に配布した。かヴァフィスのしたことを倣うという気持ちがあった。>

 こういう流れがあったのだ。中井さんとギリシャ詩の繋がりがよくわかった。ここまでくると、また引用してしまう。

<その夏、有名な文学者・大岡昇平氏が、私の私家版を入手されて、エッセイ集『成城だよりⅢ』で、「野蛮人を待つ」と「単調」とをたいへん高い評価を以て

紹介され「私のすきな詩人が一人増えた」と書かれた。また、みすず書房の編集長・小尾俊人氏が、出版しようといわれた。ためらう私に、小尾氏は「日本語(の出来)で勝負しよう」といわれた。・・・・>

 こういう経緯をへて、『現代ギリシャ詩選』(1985)、『カヴァフィス全詩集』(1988)がみすず書房から出版されている、

 みすず書房は、こんば本を」出しているのだ。「志の出版社」だと思う。上掲の中井さんの本もそんなに売れないだろう。図書館にリクエスト」したい。読みたい。