『新カラマーゾフの兄弟 上』を先月から読み継いでいる。当初は、亀山郁夫さんの新訳『カラマーゾフの兄弟』を稲城図書館で借りてきて、併行して巻1を読んだ。巻2も借りてきて読み継いでいたが、他の人のリクエストがあり延長ができず、返却を余儀なくされた。そのために、亀山さんの「新カラマーゾフ」のみを読んでいる。亀山さんは、どのような意図で、この膨大な『新カラマーゾフ』を書いたのだろうか。登場人物は、全てドストエフスキーの「カラマーゾフ」のアナロジーで、舞台を日本の1995年代に設定している。阪神淡路大震災が1月にあり、3月には地下鉄サリン事件が起きた年だ。既に歴史的な過去になってしまったが、私が生きてきた年月である。長い小説を私は何故読むのか。自らの過ぎ越し日々を思い起こしながら読んでいる。
こんな折に、昨日、稲城図書館で保坂和志さんの『書きあぐねている人のための小説入門』という本が返却棚で目についた。借りてきた。読みは始めると結構面白い。
<いま、書店には、「小説の書き方についてのマニュアル本」がたくさん並んでいて、その手の本は、小説を実地に書いていく作業を手取り足取り教えてくれるけれど、何かを直感的に感じ取れるような内容の本は、高橋源一郎野の『一億三千万人のための小説教室』(岩波新書)くらいだろう。小説家が書いたのもこの本ぐらいで、他は小説を書くのを正業としていない人によるものだから、著観的に感じることの重要さがわかっていない。・・・・「小説を書く」とは、まずは他人が発した言葉を自分の言葉に置き換えることから始まるのだ。
ふつうの言葉で伝わらないものを伝えるのが小説
自分なりに感じるとはどういうことなのか? たまたま前田英樹という武術家の書いた『宮本武蔵「五輪書」の哲学』(岩波書店)という本を読んでいたら、そこにひとつのヒントがあった。>
ここまで読んでみても、かなり興味を惹かれる、そこで保坂和志さんについて調べたら、『この人の閾』で、1995年に芥川賞を受賞している。1956年の生まれで、1981年に西武百貨店に勤めながら小説を書いていたんだという。名前は知っていたが、作品はなにも読んでいない。こんど読んでみたい。小説の書き方と言えば、井上光晴さんの書いた『小説の書き方』(新潮選書)を読んだことがある。しかし、書き方本を読めば、書けるものでもないだろう。ともあれ、保坂さんの本を読み進めてみたい。「小説とは何か?」が少し分かるかもしれない。