「夏草や人通わねば路きえり(長岡市 内藤 孝)」⇒ 稲畑 汀子選: この俳句はよくわかる。人が通らないと路ではなく叢にすぐなってしまう。「人跡未踏」という四文字熟語になってしまうのだ。
「乳房子宮なくさず母老ゆ蛍の夜」(横浜市 飯島幹也)⇒ 長谷川櫂選: 飯島さんは息子さんとして、このように老いた母を句にできるんだね。凄いように思う。
現代歌人協会編『2020年 コロナ禍歌集』がでた。571人が参加したんだと。
「ウイルスを配るがごとく避けられる郵便配達の子は戸口にて(佐伯裕子)
「住みかより出られざる春さりとても住みか失ふ人多き春(花屋多佳子)」
⇒2019年~2021年、コロナ禍おいなかで私たちの生活は、なにか閉塞感に包まれている。
「オンライン会議のために上半身着替えてわたしケンタウロスのよう(川島結佳子)」⇒ 「不自由さを嘆くのではなく、新しい日常を好奇心豊かに描いた歌もあるのだ」と、歌人の吉川宏志さんがコメントしている。
さて、次に、今週の歌壇を読む。
<評判のよいパン屋さん閉店す父母の介護と噂聞きけり(横浜市 栗原博子)>⇒佐佐木幸綱選: こういうこともあるんだね。
<ワクチンの接種を終えし人来れば副反応を皆が聞きに行く(川崎市 川上美須紀)⇒高野公彦選: 最近の情景だね。
<触れあいをしていけない祭典のオリンピックを何を目指すか(筑紫市 二宮正博)>⇒ 永田和宏選: 「国民の多数が違和感を覚えている」と永田さんがコメントした。まったく、チョットオリンピック気分にはなれないね。
<地下室に隠れて住んでいるような自粛生活明けない闇夜(札幌市 住吉和歌子)>⇒馬場あき子選:⇒ なんか、チョット疲れてきましたよね。
<流れ星の気分になってこいでゆく新しい自転車は夜空色(奈良市 山添葵)>⇒ 高野公彦、馬場あき子共選。
<いつもよりやさしいこえにきこえたよおねえちゃんのきゅうしょくほうそう(奈良市 やまぞえそうすけ)>⇒ 高荷公彦、永田和宏共選。
⇒川添さんは、多分、姉弟で常連の当選歌人だ。「自転車は夜空色」って言葉がどこから出てくるんだろう。凄いね。
<働くって大変いつもの仕送りに思いめぐらす初バイトの日(富山市 松田わこ)>⇒高野公彦、馬場あき子選: 松田わこさん、初々しい大学生になっているんだね。「働くって大変」を忘れずにね。お父さん、お母さんを思ってね。
ということで、今週の一押しは、下記にする。
流れ星の気分になってこいでゆく新しい自転車は夜空色(奈良市 山添葵)