『パン屋のパンセ』という歌集を出した杉崎恒夫さんという歌人のことを、岡野大嗣さんが書いていた。「うたをよむさみしくてあたたか」という見出しがついていた。
「さみしくて見にきたひとの気持ちなど海はしっこく尋ねはしない」
「濁音を持たないゆえに風の日のモンシロチョウは飛ばされやすい」
杉崎さんという歌人は、90歳を過ぎても、口語の歌を読んでいた人らしい。
「仰向けに生きたる蝉よ仕立てのよい秋のベストをきっちり着けて」
このような歌を読むと、朝日歌壇で選ばれている「世相歌」が何だろうとおもえてくる。
今日も、初めに朝日俳壇を読んだ。
「火の玉を抱えて眠る浅間山」(新座市 五明紀春)⇒長谷川櫂、高山れおな共選:
新座市からも、浅間屋もみえるのだろうか?私の育った、群馬の吉井町からは、浅間山が西の夕空にクッキリと見えた。噴煙を吐いていることもあった。
「万葉の多摩の横山若菜摘」(八王子市 額田浩文)⇒大串 章選:
「よこやまの道」は私の散歩道だ。
次に、朝日歌壇を読む。
「核戦争回避を言えり核兵器廃棄をしない五カ国寄りて」(観音寺市 篠原俊則)⇒永田和宏選: 篠原さん、毎日、世相を良く読んでいるのだ。分かるんだけど心には響かない。
「ウイルスが地位協定にまもられて堂々と入る基地から町へ(山口市 平野光好)」⇒永田和宏、馬場あき子共選: 「今日の沖縄のコロナ状況への問いかけ」と馬場さんがコメントしている。これって、感動を呼ぶの? 私にはわからない。
「孤独(ひとり)にて生きねばならぬ独房に小さく正座して二年目の元旦(名古屋市 西垣 進)」⇒馬場あき子選:西垣さんは、時々、入選している。名古屋の刑務所に」収監されているひとだ。犯罪を犯してしまったが、歌で耐えているひとだ。十亀さんという、東京の獄中歌人の人は、今は東京の市中から投稿している。
「霜柱すっくと立ちてブロッコリーの茎も凍るか朝の道ゆく(逗子市 織立敏博)」⇒佐佐木幸綱選
「白鳥がひき連れてくる寒さありひき連れてくる寂けさのあり(館林市 阿部芳夫)」⇒高野公彦選:
<「基地からのしみ出し」と言うウイルスが自ら意志を持ちいるごとく(観音寺市 篠原俊則)>⇒高野公彦選:
篠原さん、今週も2首が入選だ。でも、つまらん歌だ。
以下の、歌を私の一押しとする。
「白鳥がひき連れてくる寒さありひき連れてくる寂けさのあり(館林市 阿部芳夫)」