医学界新聞第3504号は「寄稿特集 私を変えた患者さんの”あのひとこと”」というのだった。
<臨床現場において、「言葉」が患者さんの回復、治癒に重要な役割を果たす場面もあるでしょう。その反対に、対話の中で患者さんが」発した何気ない言葉から臨床・研究への貴重な示唆を得たこと、といった経験はないでしょうか。
本企画では、これまで多くの患者さんたちと対話してきた先生方に、「今も忘れられず、心に残っている患者さんの”ひと事”」と「そこから学んだことを,自身にもたらされた変化」をご寄稿いただきました。>
以上が、この企画の趣旨だ。前にもやっていたような気がする。よい企画だ。
この寄稿のトップに、成瀬暢也さん(埼玉県精神医療センター副院長)の言葉が出ていた。
「私・・・薬物がなかったらとっくに死んでいたと思う」
これが、成瀬さんが、寄稿した経験のタイトルだ。鷲田さんは、これを読んで今回の「折々のことば」にとり上げた。鷲田さんはこういう。
<(ある薬物依存症の患者)依存症の担当医になりたての頃、アルコールや薬物の依存症患者にはそれをやめさせようと厳しく対応していた。虐待、性被害、自傷などの過酷な生い立ちにまで当時は想像が及ばなかったと、医師・成瀬暢也は言う。この一言にふれた後、「大変でしたね。でもこれまでよく生きてこられましたね」と患者をまずは労うようになたと。>
こういう解説を鷲田さんが書いている。よくわかる。