節酒(禁酒)が51時間を経過した。身体が軽い。夕食を済ませて片ずけを終えた午後8時40分である。飲んで食事をしたあとなら身体が重くて眠気も襲ってくるのが通例なのだがそれがない。やはり、「読むなら飲むな、書くなら飲むな」ってことなんだ。酒を止める前の町田康さんは、かつては夕方から酒を飲むために仕事は4時過ぎには終えるようにしていたと言っていた。
「認知症」のことを考えている。随分前、私がまだ現役で働いていた2000年代の初めの頃に、「2025年問題」というのがあった。これは、団塊の世代の大半が80歳に達する2025年には、認知症患者が何十万人にもなるという問題だった。この「2025年問題」が来年に迫ってきた。現実になったのだ。3年前(もう三年たったのか)、2021年に私の友人RB君が亡くなった。聞いたところでは退職してから余り動かなくて自宅にいたので身体が「廃用症候群」になってしまったらしい。病名は「アルコール性認知症」とのことだった。酒は脳を壊す。全くその通りであると思う。昨年の10月14日に合気道の稽古のあとで焼酎をたくさん飲んで小田急多摩線で自宅の最寄駅のはるひ野で降りたのだが泥酔千鳥足で歩けなくなって家族に迷惑をかけた。その時も急激に酔いがまわり記憶が曖昧になった。認知症の目前であったのだ。それ以来、自戒して節酒しているが禁酒はしていない。一昨日からお酒を断っている。その結果として身体の変化を感じている。やはりアルコールは身体を重くすると実感した。
さて、上述のような心境でいたところ本年最初の医学界新聞(第3547号)では「認知症と共に生きる」のテーマで特集を組んでいた。この号は堀田聡子さん(慶応義塾大学健康マネジメント研究科教授)が監修している。
<日本における認知症高齢者は2012年時点で462万人とされ、2025年には700万人近くが認知症を有すると計算されている。認知症の人ができる限り地域の良い環境で自分らしく暮らし続けられる社会の実現を目指す取り組みが進展する中、2023年6月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(以下、認知症基本法)が参議院で可決、成立。2024年1月に施行となった。認知症基本法のベースには、「共生」の考えがある。認知症と共に生きることの実相とはどのゆおなものなのか。認知症を生きいる人々へのまなざしがどう変化してきたかをたどると共に、異なる立場からの声を重ねて浮かび上がらせながら、共生社会の実現の見通しを考えたい。>
以上が、この特集のリード文である。
そうか、「認知症基本法」が今年から施行になったのだ。
特集では、「認知症と社会をめぐる歴史的変遷」のテーマで粟田圭一さん(東京都長寿医療センター・認知症未来社会創造センター長)が執筆している。この論文に添付の「認知症に関連する社会政策の変遷と出来事」の年表を転記しておきたい。
■認知症に関連する社会政策の変遷と出来事■
1909年 呉秀三「精神病ノ名義に就キテ(神経学雑誌)
1929年 救護法の制定
1946年 旧生活保護法の制定
1950年 新生活保護法の制定
1956年 長野県で家庭養護婦派遣事業が始まる
1958年 国民健康保険法の制定
1961年 養護施設「十字の園」の創設
1962年 老人家庭奉仕員事業の国庫補助化
1963年 老人福祉法の制定
1968年 国民生活審議会報告書「深刻化するこれからの老人問題」
1972年 有吉佐和子氏が「恍惚の人」を出版
1973年 老人福祉法改正:老人医療費無料化の導入
1976年 厚生省社会局長通知「在宅老人福祉対策事業の実施及び推進について」
1980年 呆け老人をかかえる家族の会(現・認知症人と家族の会)発足
1982年 老人保健法の制定:老人精神保健対策としての認知症施策が始まる
1984年 痴呆性老人処遇技術研修事業
1986年 痴呆性老人対策本部の設置、老人保健施設の創設
1987年 社会福祉及び介護福祉士法の制定、国立療養所における老人性痴呆に対する医療のモデル事業、特別養護老人ホームにおける痴呆性の介護加算の創設
1988年 老人性痴呆疾患治療病棟、痴呆性老人デイ・ケア施設の創設
1989年 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)
老人性痴呆疾患センター事業
1990年 在宅介護支援センターの創設
1991年 老人訪問看護制度(訪問看護ステー所9ン設置)、老人性痴呆疾患療養病棟、老人性保健施設痴呆専門棟の創設
1992年 E型(痴呆対応型)デイサービスの創設
1994年 新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)
1995年 高齢社会対策基本法の制定
痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆対応型グループホーム)
2000年 介護保険法の施行
2001年 高齢者痴呆介護研究・研修センターを設置、
国際認知症権利擁護・支援ネットワーク(DASINI)発足、
Christine Bryden 氏が国際アルツハイマー病協会国際会議で当事者として講演
2004年 「痴呆」から「認知症」へ呼称変更、
認知症サポーター等養成事業
2005年 認知症サポート医療養成研修事業
2006年 地域包括支援センターや地域密着型サービスの創設、
かかりつけ医認知症対応向上研修事業
2008年 認知症疾患医療センター運営事業
2012年 認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)
厚生労働省「今後の認知症施策の方向性について」、
WHO報告書「認知症―公衆衛生上の優先課題」
続く