TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

私の「医人」たちの肖像―(31)石田名香雄さんと「第6回国際ウイルス学会議・仙台」 ~1984年9月1~7日

(31)石田名香雄さんと「第6回国際ウイルス学会議・仙台 」~1984年9月1~7日

インターネット時代となり情報は一瞬で世界を巡る。しかし、この頃(1984年)は、日本で開催される国際学会は、情報交換の絶好の機会であった。仙台の国際ウイルス会議においても、会議に先立つ一カ月前、8月9日(木)の夕方18時~19時30分頃まで、東京・大手町のパレスホテルで、事前の記者会見が開かれ出席した。
■第6回国際ウイルス学会議・仙台■
1984年9月5~7日:
 第6回国際ウイルス学会議が、1984年9月1日(土)~7日(金)まで仙台市で開かれた。9月5日(水)~7日(金)まで、仙台に赴いて取材した。国際会議の開催経緯と会議の内容、石田名香雄会長講演の概要、等を、医学界新聞・第1622号(1984年10月9日付)で紹介した。
■石田会長講演から■
 
「ウイルスは常に二つの分子メカニズムを研究するための生物学の材料である」と、石田会長は講演を始めた。そして、「仙台ウイルス誕生地の地仙台市を、今回の会議を通じて世界各地のウイルス学者の知識を結びつける新しい「融合(fusion))を成立させる場としたい」と、結んだ。会議には世界五十四ヵ国カ国から凡そ2400名(海外から1300名)が参加した。
■ワークショップAIDS■
 
国際ウイルス学会議では、五つのシンポジウムの他に、追加として行われたワークショップAIDSが、会議の目玉の一つだった。「AIDSの原因ウイルス―HTLV-Ⅲ or LAVが有力に」、の見出しを付けて、このワークショップの内容を、医学界新聞・第1622号の三面に詳しく紹介した。
 この時点では、エイズ原因ウイルスは特定されておらず、HIV(Human Immunodeficiency Virus :HIV)は確定していなかった。後にHIV命名されたエイズウイルスは、まだHTLV-Ⅲと言っていた。エイズウイルス発見の優先権を争っていた米 NIHのギャロ(Robert Gallo)とフランス パスツール研のリュック・モンタニエ(Luc Montagnier)の二人共が、仙台で発表することになっていた。しかし、この時にはギャロは来日せず、モンタニエだけが会議に出席した。
 ワークショップAIDSについて、以下に概要を紹介する。
 「1983年秋頃、米国NIHのGalloらのグループが、AIDS患者の血液を培養して、HTLV(Human T-cell Leukemia Virus)に非常によく似ているが異なるウイルスを分離、それをHTLV-Ⅲと命名した。一方、フランスのパスツール研究所のMontagnierらは、Lymphadenopathyというリンパ腺が異常に腫れる病気の患者から採取した細胞を培養し、そこからやはりC型ウイルスを分離、それをLAV (Lymphadenopathy Associated Virus)命名した。」
 ワークショップには、米国からはGalloが所属していたNIHのNCI(国立癌研究所)、アトランタのCDC (Centers for Diseases Control) から研究者が参加した。フランス パスツール研からは、Montagnierが参加した。仙台を舞台に、エイズウイルス発見の優先権をめぐる鍔迫り合いが行われた。
■ウイルス学上発見の優先権をめぐって■
 
ワークショップを紹介した記事の右上に、「ウイルス学上の発見の優先権をめぐって―Gallo (NIH)、 Montagnier (パスツール研) 両博士」という短い関連記事を書いて掲載した。Gallo、Montagnier両博士の写真も挿入した。Galloの写真は、国際細胞生物学会の折にNature誌のAnderson氏によるGalloへのインタビュー収録の折にカメラマンのTYさんが撮影したものだ。Montagnierの写真は、私が仙台で撮った。
 この記事に、Nature誌(Vol. 310, 9 August, 1984)に掲載されたMontagnierからNature 誌への「レター記事」のコピーを一部挿入した。これは、Nature編集部のTim Beardsley に対する抗議の手紙だ。その概要は以下のようだ。再掲する。
 「Nature誌1984年7月19日付の 〈Dispute over AIDS patent priority〉  の記事は、LAVを自らが発見する前にGalloからHTLV-Ⅲの提供を受けたという印象を読者に与えかねないから気をつけてほしい。反対にわれわれが、1983年7月17日と9月23日に、Galloに対してLAVを提供したのだ。」 
 パスツール研のLAVは、1983年7月15日以来、〈National Collection of Cultures of Microorganism〉に委託され、米国のCDCを始め世界の10数の研究所へ分与されている。ともあれ、遠からずAIDS原因ウイルス発見の優先権についいては決着が着くであろうが、二つの科学上の傑出した成果が同時に実を結ぶことのよくあることは、歴史の教えてくれるところでもある。
■石田さんはセンダイウイルス発見者■
 
会長の石田名香雄さんは、インフルエンザウイルスと抗原性が異なる赤血球凝縮能をもつ新種の「センダイウイルス(Hemagglutinating Virus of Japan: HVJ)」を、1953年に発見したことで著名であった。センダイウイルスの構造研究を続け、センダイウイルスが細胞に感染し増殖する仕組みを世界に先がけて解明。また、その仕組みが多くのウイルスでも共通に見られることがわかり、「B型ウイルス肝炎」の本態解明の契機となり、ワクチン開発につながるなど21世紀の国民病といわれた「 B型ウイルス肝炎」の激減に貢献した。1975年に東北大学医学部長、1983~89年、同大学総長を務めている。
(2018.11.17)
(私の「医人」たちの肖像― 〔31〕石田名香雄さんと「第6回国際ウイルス学会議・仙台」~1984年9月1日~7日)