TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

PCR検査と新型コロナウイルス感染

 新型コロナウイルス感染が焦眉の課題になってからPCR検査が何かと話題になっている。この機会に、PCR検査について記憶と記録のために纏めておきたい。実は、PCR(Polymerase Chain  Reaction)ができたのは1983年のことだから、まだ37年しか経っていない。私が医学医療の専門誌の記者になったのは1981年のことだった。その2〜3年後に、PCRの原理をまとめた洋書が日本でもベストセラーとなった。まだインターネットのない時代だったので、新しい技術は書籍や雑誌論文で読んで情報を入手するしかなかった。

 ■PCRって何?■
 PCRは日本語では、「ポリメラーゼ連鎖反応」という。これは、DNAサンプルから特定の領域を週百万~数億倍に増幅する技術である。DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きを利用して、一連の温度変化のサイクルを経て任意の遺伝子領域やゲノム領域のコピーを指数関数的に(連鎖的)に増幅することで、少量のDNAサンプルからその詳細を研究するのに十分な量にまで増幅することができるようになった。この技術が開発されてから分子生物学が格段に進歩した。PCR方が確立がされて、DNA配列クローニングや配列の決定、遺伝子変異誘導といった実験が可能になり、分子生物学は分子遺伝学、遺伝子工学という方向に発展してきた。
 PCR法は1983年に米国のキャリー・マリス(Kary Mullis)によって発明された。私が医学医療分野の記者になった1981年に、東京で日本医学会総会が開かれたが、その時にはまだPCRは発明されておらず、分子生物学は黎明期であった。その2年後の1983年にPCR法が発明されたことにより、1985年の医学会総会の総合展示会場の目玉はPCR機器であった。PCRを発明したキャリー・マリスは、10年後の1993年にPCR原理の発明の業績で、ノーベル化学賞を受賞した。同じ年に日本国際賞も受賞している。

 新型コロナウイルスに対する日本のPCR検査が少ないのは何故■
 新型コロナウイルスへの日本政府の対応について、海外からはの批判が相次いでいる。日本はPCR検査数が少な過ぎるのではないか?日本での新型コロナウイルス感染が、米国や欧州に比べて少ないのは、PCR検査をしていないからで実際はもっと多くの隠れた感染者がいるのではないか、との懸念である。事実、味覚症状の異常がみられたり、発熱したりしても、症状が軽い場合には保健所に連絡してもPCR検査を行って貰えないケースがあったようだ。PCR検査は、保健所や医療機関のどこでもできる訳ではない。検査機器を備えた専門の機関でのみで検査が可能である。検査機器は、現在ではコンパクトなものに進歩しているが、検査には数時間を要する。
 C型肝炎ウイルのキャリアであった私の場合も、一般的な血液検査は院内で1時間程度で結果がでたが、PCRだけはSRLという検査機関に依頼するので、結果の確認はで1週間を要していた。今後は症状の軽いひとでも感染が疑われたら迅速にPCR検査で感染の有無を明らかにして迅速に治療に対処することが必要なのは当然であろう。感染を疑ったが症状がかるいために自宅待機しているうちに急速に悪化して、死亡して後から感染が確認された例が幾つも報道されていた。