WHO(世界保健機関)は国際連合の専門機関の一つであるくらいの知識がある。また、1988年~1998年の10年間、日本人の 中嶋 宏さんが第4代事務局長を務めたことは周知であろう。このシリーズブログでも中嶋 宏さんに既に触れた。ちなみに、現在のテドロス・アダノム事務局長は第8代にあたり、エチオピア出身だ。今回新型コロナウイルス感染防止に関して専門家会議の副座長そして新専門家分科会の会長に就任した尾身 茂さんは、20年に渡りWHO地域事務局の一つである西太平洋(フィリピン・マニラ)で長いこと勤務していた。WHOに関して私の知ることはこの程度なので、今回、WHOについて記憶と記録のために纏めることにした。
■米、WHO脱退を正式に通知■
トランプさんの米国政権が、来年(2021)7月6日付けでWHOから脱退すると、国連に対して正式に通知した。新型」コロナウイルスをめぐるWHOの対応を中国寄りと批判してきたトランプ大統領の方針に沿った対応である。米国が1948年にWHOに加入した際に、脱退するときには1年前に通知することなどが条件となっていたので、正式な脱退は1年後になる。この脱退通知には米国ないでも批判が出ており、今年11月の米大統領選挙結果により見直しもありそうだ。WHOのテドロス・アダノム事務局長は、世界の連帯を旗印に、新型コロナ対策での国際協調を訴えてきたが、中国を評価する姿勢が批判を浴び、米国の脱退表明につながったことは、今後のWHO運営に大きな痛手となった。
■COVID-19をめぐる対応の遅れと政治性の指摘■
今回の、新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患に対する対応をめぐり、流行が始まった2019年の12月の時点で、ヒトからヒトへの感染が起きた疑いがあるとの報告を台湾から受けていたにも関わらず、この情報を国際社会に示さず、台湾のwHO総会への参加が見たおめられなかったことへの批判がまずある。米国のトランプ大統領は、WHOは中国寄りで、世界に不適切な提言を行っていると批判して、WHOへの拠出金の停止をこの4月に表明していた。WHOは台湾からの通知について、AFP通信の取材に対して、「ヒトからヒトへの感染についての言及はなかった」と否定した。それを受けて、台湾当局は「中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている」といった内容が含まれるWHO宛の通知の全文を公開し、WHOが台湾の情報を生かしていれば、感染拡大へ早く対応できたと主張している。台湾はWHOの会員には認められておらず、いわば二つの中国の壁が新型コロナウイルスに関して情報の適切な開示を閉ざしたといえるだろう。トランプ大統領は、5月29日のホワイト・ハウスでの記者会見でWHOが「中国より」であることを改めて批判、年間4億5千万ドル規模とされる米国のWHOへの拠出金を他の保健衛生関連の国際組織に振り向け、WHOを脱退すると発表していた。それでは、日本はWHOへどのくらいの拠出金をだしているのだろうか。6月19日に、菅官房長官は6月19日の記者会見で、WHOの拠出に関して、「50億円を出すことにした」と表明した。同時に、「国連の専門機関としてその専門性を生かし、活動を推進すること期待する」と述べた。
【参考資料】
■WHO地域事務局の所在地と管轄地域■
アフリカ(コンゴ・プラザヴィル)
アメリカ(アメリカ合衆国・ワシントンDC)
東地中海(エジプト・カイロ)
ヨーロッパ(デンマーク・コペンハーゲン)
東南アジア(インド・ニューデリー)
西太平洋(フィリピン・マニラ)