TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

気になる「言葉」を見つけた―「文学」という学問があり

 親しい友人は次々とこの世を去った。合気道の仲間で親しくなったS君は、十五年くらい前に死んでしまった。職場の先輩、上司、同僚も60歳を少し超えたばかりでなくなった人が多い。わたしを圧迫した上司も定年後まもなくして去っていった。「あれは何だったのか」というように恩讐の彼方に去っていく。
 こうした中でわたしには、本を読む時間が与えられたのだ。読んで読んで、歩いて歩いて行くしかないようだ。そのなかで、書きたいことが生まれてくるかもしれない。昨日から、保坂和志さんの「書きあぐねている人のための小説入門」(草思社)を読んでいる。

私たちの言葉や美意識、価値観をつくっているのは、文学と哲学と自然科学だ。その三つはどれも必要なものだけれ、どれが根本かといえば、文学だと思う。私たちは「美しい」や「醜い」などの言葉を当たり前のように使っているが、これらの言葉はすべて文学が作り出し、そして文学によって保障された価値だからだ。
 ふだん人がしゃべっている言葉を根底で保証するのが小説家の仕事―小説を書こうと思っている人は、はったりでもいいから、そういう自負を持ってほしいと私は思う。>

 上記の保坂さんの本の、「第1章 小説を書くということ―感じ、そして考えること」の最後のパラグラフから腑に落ちて、感銘した部分を書き出してみた。
 私は文学部を卒業して、医学系出版に職を得て、医学書の販売、医学界新聞の記者、医学雑誌の編集者として、43年くらいを過ごして生きてきた。医学の分野で,医師とつきあってきたので、自然科学としての医学を価値観のトップに置いて考える癖がついてきた。「どれが根本かといえば、文学だと思う」。保坂さんの文章に実はわたしは深い感銘を受けている。「文学が一番なんだ」ということが、何故か嬉しい気がする。なんのとりえもない私が文学を読めるということが、どれほどの幸せなのかを噛みしめ始めている。